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金活財布、15200円。

文・内藤みか

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 9月5日は満月だった。びっくりするほど丸く美しく明るい月が、私が住むマンションの駐車場からも良く見えた。
 普通ならば「まあ綺麗ね」と親子で微笑み合うところだが、私と娘は違った。月に向かってすっと右手を伸ばし、
「よろしくお願いしま?す!」
 と左右に大きく振ったのだ。

 私たちの右手には、口を開けた財布がしっかと握られていた。なぜこんなことをしているかというと、近頃ブロガーの間で「満月にお財布を振るとお金が貯まる」という話が広まっているからだ。なんでも、真ん丸の月にはパワーが満ちているので、お財布の中も"満たされる"かららしい。
 本当なのかなあと私もここ数ヶ月ほどお財布を振り続けている。ただ月に向かってお財布を掲げてフリフリするだけだから、物は試し、というやつだ。気のせいかフリフリした後で私の持っている株が倍額になったようだけれど、でもこのことが原因かどうかは、定かではない。

 でも美しい月を見つめながらお財布を天に向けるという行為は、やってみると、かなり清々しい。今月もよく働いたなあ。よし、次の満月までまた頑張って働くぞ、というひとつの区切りになるのもいい。

 満月にお財布を振ろう、とブログで呼びかけているのはハッピーコーディネイター・みさきのゑさん。お財布を振る人たちのことを『フリフリーゼ』と名付けている。会員は日本各地に150名以上。

 このフリフリーゼさんたちは、満月になると金運がアップしそうなスポットに集結し、集団でお財布を振っている。私も一度見かけたことがあるけれど、女性達がバッグからスッと財布を取り出し、空に真っ直ぐ伸ばした腕を左右に振っている光景に圧倒された。皆、金運が良くなるというキラキラした同じデザインの財布を持っているので動きも揃って見えた。

 私はどこかでこれと同じシーンを見たことがある。しばらく考えて、それは、氷川きよしのコンサート会場だと思い至った。「き・よ・し!」とおばさまがたがペンライトを振っていた姿だ。真っ直ぐ腕を伸ばし、右に左にキラキラしたものを動かしていた。 それで私はわかった。ああ、女性は、輝くものが大好きなのだ。光る月に向かって、きんきらの財布を振ると、もうそれだけで気分が高揚するのは、一種の本能みたいなものなのかもしれない。

 フリフリーゼがお揃いで持っている財布には鈴が付いている。一斉に振るとそれがリリリリリと鈴虫のように可愛らしい音を立てる。あんまり可愛いから私も買ってしまった。15200円は私にとっては大出費だ。さあ、私の金運、上がるかしら。


<フリフリーゼのブログはこちら>
http://ameblo.jp/kinkatsu/


(更新 2009/9/10 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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