今年5月、20歳になるのを見計らったように、わが家の飼い花子(写真)が徘徊というものを始めた。

 風呂場や玄関など普段は立ち寄らないところにまで足を延ばすようになり、オロオロしている。粗相をするようにもなった。

 1階の廊下の一角にキャリー兼用の寝床とトイレを置いてあるのが、彼女の部屋といえば部屋である。そのかどっこに頭を突っ伏すように動かない時間が増えて、いつお迎えが来てもおかしくない状態だった。

 キャットフードも水も自分では食べなくなった。だらりとした鼻先まで持っていって水を飲ませた。

 昼間勤めに出る妻と一日中家にいる私なので、当然ながら、もしものときの担当者は私であり、気が重い。

 ところが1週間ほどすると、食事をきちんととるようになり、トイレもできるようになった。衰えは戻しようもないが、見事に復活を果たしたといえる。

 娘が小学校の卒業間近にいただいた子猫である。その直前にクッキーという雄猫が2歳か3歳で死んでしまった後にやってきた。

 名前は私が付けたが、花子は私にはあんまり懐かないでいた。彼女はお転婆で、近所の雄猫との壮絶な喧嘩は近所迷惑も甚だしかった。傷は絶えなかったし、自慢なのかネズミのような獲物を家のベッドに持ち込んで子供たちの顰蹙(ひんしゅく)を買ったりもしていた。

 2012年、転勤で仙台に来ていた私のところに妻とともに越してきた。灼熱の埼玉の夏にグロッキーになり、涼を求めたわけだ。家につくと言われる猫だが、すぐに慣れたようだ。

 お盆や正月に、埼玉に帰るため車で6時間ほど移動しても平気な様子だったが、さすがにもう無理だろう。彼女の老後を見ながら、いろいろと私たちは学ぶことが多いようだ。
(高橋英徳さん 宮城県/59歳/無職)

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