第1175回 ダリアに教えてもらった夫の散歩コース

2016/05/12 10:28

 朝7時、庭にちょこんと座り、夫を待つビーグル犬のダリア(写真、雌、8歳)。毎朝の光景だが、犬の体内時計の正確さに感服する。
 夫が現れると、ちぎれんばかりに尻尾を振り、喜びを表現する。それでも足りず、夫の周りをグルグル回る。まるで恋する乙女そのもの。仲良く散歩に出かける“ふたり”の姿は、相思相愛のカップルのようだ。
 ダリアを飼い始めて8年。朝夕の散歩は私の役目だったのだが、いつまでも元気なダリアに私の体力がついていかなくなった。そこで夫に泣きつき、朝の散歩を頼んだ。
 出勤前の慌ただしい時間なので、初めは嫌がっていた夫だが、喜びにあふれるダリアにまんざらでもないふうで、今ではすっかり習慣になった。
 こんな穏やかな日々がずっと続くと信じていた矢先、夫が体調を崩し、しばらく入院することになった。
 夫が不在の家はなんだか寒々として、私の心も凍りそうだった。しかし事情を知らないダリアは、いつものように夫を待っている。
「しばらくお父さんはおらんのよ」。そう言ってもダリアにわかるはずもなく、座ったまま動かない。毎朝、現れない夫を待ち続ける。
「ダリア、お父さんとの散歩コース、お母さんに教えてくれる?」。ある朝、ダリアにお願いしてみた。
「よっしゃ、ついといで」とでも言うように、勢いよく駆け出すダリア。裏道をひたすら進む。
 しばらく行くと川に出た。水鳥が羽を休めている。さらに進むと花畑。
 ふと気がついた。夫の散歩コースには自然があふれている。私のようにコンクリートの道をただ歩くだけではなかった。夫の得意げな顔が浮かんだ。
 夫は無事退院し、朝の日課が復活。ダリアは3割増しで夫の周りを回っている。

あわせて読みたい

  • 第1142回 家族をつなぐいたずらっ子。その名も…

    第1142回 家族をつなぐいたずらっ子。その名も…

    週刊朝日

    9/10

    第1156回 ♂(オス)だけど「さゆり」です

    第1156回 ♂(オス)だけど「さゆり」です

    週刊朝日

    12/17

  • 「前向きな別居」も有効? 熟年離婚を回避する“夫婦円満の秘訣”

    「前向きな別居」も有効? 熟年離婚を回避する“夫婦円満の秘訣”

    週刊朝日

    8/30

    第1312回 散歩コースをグイグイひっぱってくれた

    第1312回 散歩コースをグイグイひっぱってくれた

    週刊朝日

    2/14

  • 中高年夫婦の「卒婚」に落とし穴 “お試し”のつもりが離婚になるケースも

    中高年夫婦の「卒婚」に落とし穴 “お試し”のつもりが離婚になるケースも

    週刊朝日

    7/26

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す