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朝7時、庭にちょこんと座り、夫を待つビーグル犬のダリア(写真、雌、8歳)。毎朝の光景だが、犬の体内時計の正確さに感服する。
夫が現れると、ちぎれんばかりに尻尾を振り、喜びを表現する。それでも足りず、夫の周りをグルグル回る。まるで恋する乙女そのもの。仲良く散歩に出かける“ふたり”の姿は、相思相愛のカップルのようだ。
ダリアを飼い始めて8年。朝夕の散歩は私の役目だったのだが、いつまでも元気なダリアに私の体力がついていかなくなった。そこで夫に泣きつき、朝の散歩を頼んだ。
出勤前の慌ただしい時間なので、初めは嫌がっていた夫だが、喜びにあふれるダリアにまんざらでもないふうで、今ではすっかり習慣になった。
こんな穏やかな日々がずっと続くと信じていた矢先、夫が体調を崩し、しばらく入院することになった。
夫が不在の家はなんだか寒々として、私の心も凍りそうだった。しかし事情を知らないダリアは、いつものように夫を待っている。
「しばらくお父さんはおらんのよ」。そう言ってもダリアにわかるはずもなく、座ったまま動かない。毎朝、現れない夫を待ち続ける。
「ダリア、お父さんとの散歩コース、お母さんに教えてくれる?」。ある朝、ダリアにお願いしてみた。
「よっしゃ、ついといで」とでも言うように、勢いよく駆け出すダリア。裏道をひたすら進む。
しばらく行くと川に出た。水鳥が羽を休めている。さらに進むと花畑。
ふと気がついた。夫の散歩コースには自然があふれている。私のようにコンクリートの道をただ歩くだけではなかった。夫の得意げな顔が浮かんだ。
夫は無事退院し、朝の日課が復活。ダリアは3割増しで夫の周りを回っている。
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