4年前の秋の昼下がり、片側にはため池、反対側には田畑が広がるのどかな道を、車で出かけた帰りのこと。草の実を体にいっぱいつけ、力なくさまよっていたのがルビー(写真)でした。
 雄の成犬で、首には跡があるだけで首輪はありません。柴犬より一回り大きく、シェパードも少し入っているかと思われる精悍な顔立ちは、犬が苦手な人には怖く感じられることでしょう。
 このままでは捕獲されて処分されてしまうか、交通事故に遭うか、餓えたまま行くあてもなく歩き続けるか……。声を掛けると逃げ腰になるものの、逃げてはいきません。餓えも限界に近かったのか、恐怖よりも食べるものがもらえるならという感じにも見えました。
 この犬を知りませんか?などと通りかかった人に声を掛けてみましたが、誰も知りません。
 近くの家の奥さんに車内に誘導するためのソーセージをもらいましたが、こういう場面では知らない人にも声を掛けられるものです。
 連れ帰ってから警察や動物愛護センターなどに連絡しましたが、飼い主さんにつながる情報は得られず、うちの子として迎えることにしました。その後は岡山や山口、四国や信州に泊まりがけの旅をしたり、県内各地への日帰り旅行もたくさんしてきました。
 保護して1年半ぐらいは、走る車を目で追ったり、道行く人をじっと見つめたり……。うちに完全に慣れたとは言いがたく、前にいたところが自分の本当の居場所だと思っているような雰囲気を感じることもありました。
 以前はどんな飼い主の元でどのような日常を送っていたのか何もわかりませんが、寿命を終えるまではできるだけのことをして、穏やかな暮らしを送らせてやりたいと思っています。

(山口眞智子さん 兵庫県/65歳/パート)

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