昨年の春、裏庭でのケンカの声がした。外に出てみると相手の猫の姿はなく、この猫1匹が残っていた。この子が劣勢だったのは明らかで、顔中傷だらけ。そっと近づくと意外にも逃げることなく私の腕に抱かれ、そのままわが家へお持ち帰りされた。
 顔だけでなく、体や足も大小のケガをしていて、傷だらけ。せめてこれからの猫生を平和で穏やかに過ごさせてあげたいという思いでわが家へ迎え入れた。
 年齢不詳だが、その後、連れていった動物病院の先生によると、すり減った歯や爪の状態から見ても「かなりの年齢」だそうだ。
 背中側がグレーで、おなか側が白の男の子。家に入れた当初は白い部分も汚れていて全身ほぼグレーだったので、「グレくん」と命名した。
 野良猫時代が長く、生きることに苦労を重ねてきたのか、最初はとても険しく厳しい顔つきをしていたが、だんだんと穏やかで優しい顔つきに変わってきた。
 猫だけでなく、人間もそうだが、その時々の環境や状況によって顔つきや表情が良くも悪くも変わるということを改めて思った。
 ところで、グレくんは動物病院が大好きだ。先日、肉球の部分がひび割れて痛そうな歩き方をしていたので連れていったのだが、診察台の上で仰向けにされても非暴力、無抵抗。実におとなしく診察を受け、注射の時も逃げるそぶりさえ見せない。むしろ、のどをごろごろ鳴らして余裕たっぷりだった。
 ベテランの先生に「いったいこの子はなんなんでしょうね」と、驚かれた。
 写真はグレくんお得意のポーズ。名付けて「くつろぎのポーズ」。飼い主の私にとってはこの上ない「癒やしのポーズ」で、このモフモフのおなかに顔をうずめるのが至福のひとときだ。

(青木敏子さん 北海道/78歳/主婦)

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