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第33回 「受け止める」ということ

文・大谷由里子

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マンガ/上大岡トメ

マンガ/上大岡トメ

「かわいそうかなあ」と思ったけれど、わたしも周囲のメンバーもそっとしておくしかできなかった。

 しばらく経って、彼女から電話があって、出てみた。

 声が以前とは違っていた。

「ごめんね。なかなか受け止められなくて。でも、やっと受け止めたの」

 彼女は、ひとしきりあがいて、気づいたらしい。

「わたしが、自分で受け止めるしかない」ということに。

 そして、いろんなお医者さんのガンに関する本を読んだ。

 そして、セカンドオピニオンも見つけた。

 いろんな人の話を聴くたびに、「自分で答えを出すしかない」と、思えてきたらしい。

「これも、わたしの運命だと思って、自分で納得の行くようにしょうと思ったの」

 そう彼女は言った。

 私自身も、阪神大震災の後、どうしていいかわからなかった。

 仕事はまったくない。でも、経営者だったわたしは、社員に給料も払わなければならない。

 家賃も社会保険も払わなければならない。

 出て行くお金はあるのに、入ってくるお金はない。

 最初は、ジタバタした。でも、ジタバタしてもどうしょうもない。

「なるようにしかならない」

 状況を受け止めて、開き直って、失ったものよりもあるものに目を向けた。

 時間だけは山ほどあった。

「時間があれば何をしたかったか」

 考えて、考えて、文章を書きだした。

 それが、一冊目の本、『吉本興業女マネージャー奮戦記「そんなアホな!」』(朝日文庫)で、ロングセラーとなって、いろんなチャンスをもらうことになった。

 だから、わたしは、伝えたい。

 何か起こった時、

「目の前で起こっていることは起こっていること。これを受け止めるしかない」

 と思うことがどれだけ大切かを。


(更新 2015/10/ 6 )


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プロフィール

大谷由里子(おおたに・ゆりこ)

 1963年奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。故・横山やすし氏のマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし注目を集める。2003年、研修会社の志縁塾を設立。「笑い」を取り入れた「人材育成研修」は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。 現在は、年間300を超える講演・研修をプロデュース中。主な著書に『仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房)、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)など多数。

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