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『宇宙戦艦ヤマト2199』に見た"ヤマト"魂

文・中島かずき

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『宇宙戦艦ヤマト2199』のテレビ放送が始まりました。
 この作品は、まず劇場で先行公開し、映像ソフトを発売した上で、最後にテレビ放送があるという、かなり変則的な展開のプロジェクトです。
 これも『ヤマト』というビッグネームタイトルだからこそ成立したやり方かもしれません。

 出渕裕さんが『宇宙戦艦ヤマト』の第一シリーズのリメイクを手がけているという噂を聞いたのはずいぶん前になります。
『ヤマト』を実写映画化するという話と同じ頃だと思うので、もう4、5年前でしょうか。
 出渕さんや樋口真嗣さん、庵野秀明さんなど知人・友人も参加するということだったので、まったくの他人事ではなかったのですが、それでもこの時代に『ヤマト』を復活させるということに関しては、複雑な思いで聞いていました。
 手を加えるとは言え、『ヤマト』という作品を今やり直すことの意味が、僕にはよくわからなかったのです。

 1974年に放映された『宇宙戦艦ヤマト』という作品が、児童向けの漫画映画から、今のようなティーンを中心とするアニメブームの端緒を開いたことは間違いありません。
 自分自身、最初の放送を見たとき「やっと自分たちの年齢の人間が見ても恥ずかしくないアニメができた」と思いました。
 当時、中学3年生でした。子供番組はとっくに卒業していなければならない年齢です。しかも、まだ茶の間に一台しかテレビがない時代です。
 それでも、アニメや特撮などが見たかった僕は、「いつまでこんな子供番組を」という親の視線に耐えながら見ていました。
 そんな中で放映された『宇宙戦艦ヤマト』はほかのアニメに比べるとグッと大人っぽかったのです。
 個人的には、敵の殲滅(せんめつ)ではなく、汚染された地球を救うために放射能除去装置を受け取る旅に出るという目的や、敵との攻防のアイディアが、SF的であり戦争映画っぽくあった。
 中盤の強力なライバルとの決戦回は、オープニングの主題歌をなくしてその時間も本編に回していた。当時、アニメでこんな風にフォーマットを崩すのはとても珍しかったのです。スタッフたちの、新しいアニメを作るぞという気合いは、ブラウン管のこちらにいる自分にも非常に伝わってきた。
 低視聴率で打ち切りになったのですが、その後再放送などで人気があがり、映画化から続編制作と人気タイトルになっていきました。これも自分たちのような若い世代のファンの声が制作側に届いて決まっていったのです。
 のちに『機動戦士ガンダム』などでも起こる現象ですが、『ヤマト』はその嚆矢(こうし)の一つでした。
 僕も「俺たちの作品だ」という気持ちで応援していました。
 ところが、続編の新作映画の『さらば宇宙戦艦ヤマト』あたりから、なんとなく違和感を覚えてくる。
 西崎義展プロデューサーが前面に出て来るにつれて、軍国主義的な雰囲気が強くなり、自分が好きだった宇宙SFの雰囲気や、主義主張ではなく戦いの攻防を見せるという意味での戦争映画の面白さがどんどん薄まっていったのです。
 それからいくつも続編が作られましたが、もうその頃には『宇宙戦艦ヤマト』シリーズというのは、むしろ事大主義でダサいものだというイメージになっていました。
 
 いくら出渕さんががんばっても、戦艦大和が宇宙を行くというアニメは、今の時代では受け入れにくいのではないか。『ガンダム』や『仮面ライダー』のように、今も継続して作られている作品群とは違い、設定自体に無理があるのではないか。そう思っていたのです。
 出渕さんや樋口さんと会った時には、直接そういう意見も言いました。

 ですが、最初の先行上映で第2話までを見たときに、自分の浅はかさを思い知らされました。
 出渕さんたちのヤマト愛は半端ではなかった。
 素晴らしい画面のクオリティ。大時代的な設定やドラマ展開を丁寧に修正して説得力を増している。
 素直に面白かった。
「懐疑的な態度でごめんなさい」とのちに出渕さんに会ったときにあやまりました。
 先行上映で第14話まで見ているのですが、オリジナルの解釈も加えていて、個人的には、この先どうなるのか本当に楽しみな、相当面白いアニメになっています。
 
 作中で、前時代の遺物である戦艦大和を改造して宇宙を飛んだように、出渕さんたち、『ヤマト2199』のスタッフは、古色蒼然とした『宇宙戦艦ヤマト』というタイトルを今見ても面白いように、もの凄い情熱と深い愛をもって再構築している。
 その行為そのものがまさに、『宇宙戦艦ヤマト』の魂ではないかという気がしています。
 この情熱が、僕らロートルファンだけではなく、今の若いファンにも届きますように。切にそう願います。

 第1回の視聴率はよかったようで、「ヤマト好発進」という記事を読みました。
 幸先のいいスタートが切れたようです。
 ですが、半年後には最終回がやってきます。
 ここまでは時間をかけて丁寧に作ってきましたが、テレビ放映が始まったので、もうタイムリミットは決定しました。
 がんばれ出渕裕、2199アニメスタッフ。ヤマト最終回まであと半年しかないのだ。
 このまま『ヤマト2199』の航海が順調に行きますように。


(更新 2013/4/12 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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