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奇祭奇譚集『まつるひとびと』ができました

文・中島かずき

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 もう三年ほど前になるでしょうか。
 ポプラ社の「asta*」という雑誌の『まつるひとびと』という短編連作小説を、半年ほど連載していました。
 それが、ようやく単行本になります
 いや、長かった。
 同時期に連載していた他の作家の連載が、とっくに単行本になり、文庫化までされたので、「まずいなあ」と思っていたのですが、一冊にまとめるにはちょっと原稿の分量が足りなくて、一本書き下ろし短編を書いてくださいと担当から言われていたのです。
 ところがこれがなかなか書けなかった。
 忙しかったこともあります。
 でも、自分の中で、改めて小説というものにとりかかるまでのハードルが相当高かったのですね。
 
『まつるひとびと』は、日本の奇祭を題材にした連作です。
 ただ、祭りが主題ではなく、そこに関わる人々のドラマを描きたかったので、今回扱う祭りはすべて実際にはない虚構の町での虚構の祭りにしました。よく似た祭りはあっても、ちょっとアレンジを加えてたりする。
 連載する前、ネタ出しの段階で、祭りのアイディアはすぐに浮かびました。
 作品のテイストも、SFやドタバタ、奇妙な味の恋愛物や、自分が子供の頃の原風景を題材にした物など、一作一作味わいの違う物にしたかった。
 追加分の書き下ろしも、話はすぐにできた。
 これがシナリオなら、それほど苦にならなかったんじゃないかと思います。
 頭の中に絵は浮かんでいるのですが、これを小説で表現するにはどうしたらいいか、それに悩んでいたのです。
 
 芝居の台本や映像シナリオは、登場人物の会話で物語を語っていく技法です。
 これは、昔からずっとやってきているので、なんとなくコツは掴んでいる。
 でも小説は違います。会話以外の描写、文章でドラマを語るという技法に関しては、まだまだ慣れていません。
 それでも〆切は迫っている。
 だったら一番書き慣れたやり方で書こう。それは、この「電人N」で書いているやり方です。
 一人称にして、ふだん僕がここに書いているようなしゃべり言葉で文章をつなげていく。かなり主人公の心象が書かれることになるが、むしろそれを楽しんでみよう。
 そう開き直って、ようやく〆切に間に合いました。
 この連載のおかげですね。
  
 一般書店では今月末、多分28日頃の発売になると思うのですが、『髑髏城の七人』公演中の、大阪梅田芸術劇場で18日から先行発売することになりました。
 劇場で見かけて、ちょっと気になったら、宜しくお願いします。
 
『髑髏城の七人』と言えば、出演していた吉田メタルが、骨折のため降板しました。
 詳細は、公式サイトにも出ているとは思いますが、ご心配をおかけしたお客様にはお詫びいたします。
 彼の降板に伴い抜けた穴は、代役ではなく、他のキャストに台詞や役割を振り替えて、また一部は脚本を改訂して、本番は行うことにしました。
「なぜ代役をたてない?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、彼の役は、悪役軍団の幹部の一人。これまで一緒に稽古をしていた他の幹部役の役者に、台詞や出番を割り振ったほうが、今ここで何も知らない人間を入れるよりは、短時間の稽古で一番影響が少ない形で芝居が続行できると判断したのです。
 これから観に来ていただく方には、これまでと遜色のない舞台がお見せできるようキャスト・スタッフともに頑張っています。
 事故の起きないよう十分に注意していましたし、今回のケガもケアレスミスなどではない突発的なものなのです。それでも、こういうことが起きる。
 役者本人も悔しいでしょう。
 ただ、ここからは一人の怪我人も出ないよう、よりいっそうの注意を払っていくはずです。
 僕も、東京の空から、無事を祈ります。


(更新 2011/8/18 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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