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「恵方巻」を百倍楽しむ方法

文・中島かずき

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 昨日は節分でした。
 昔だと豆まきが節分の代名詞でしたが、いつの間にか恵方巻も有名になってしまいましたね。
 この五年くらいですか、こんなに知られるようになったのは。
 いま、ATOK20007で「えほうまき」と打っても一発で変換するくらいになりました。
 この日本語変換ソフトで、意外に流行というのはわかるもので、15年ほど前に「おんみょうじ」と入れてもなかなか正確には変換してくれなかったのですが、ATOK17あたりですんなり「陰陽師」と出るようになった時には、「おお、メジャーになったものだのう」と感慨もひとしおでした。安倍晴明ブームは伊達じゃなかったのですねえ。

 それはさておき、皆さんは食べましたか、恵方巻。
 うちはやりましたよ。
 夕食代わりに家族分買うために、会社帰りにデパ地下に寄ったら、なんと行列が出来てました。人気店は、20人くらい並んでたかな。いやあ、驚いた。正直、巻き寿司買うのに並ばされるとは思わなかった。
 バレンタインデーと同様に、売り手の仕掛けがまんまと当たったということですね。
 まあ、一番人気の店に並ぶガッツはなかったので、そこそこ並んでいる店で買いましたが。
 
 しかし、客観的に見たら、へんな光景ですよね。
 家族一同、口に大きな巻き寿司くわえて、直立不動で同じ方向むいて黙々と食べる。
 とりあえず食べ終わって「やっぱへんだよ、この風習は」とつぶやくと、息子が「変なのがいいんじゃない、おもしろくて」と答えました。
 なるほど。確かに最初に聞いた時は、「なんか馬鹿馬鹿しい風習だな。あんまり聞いたことがないけど、そんなの流行るのかな」と懐疑的でしたが、その馬鹿馬鹿しさがよかったのかもしれませんね。 
 
 でもどうせだったら、もっと馬鹿馬鹿しい方が楽しいかも。
 学校とかで、校庭に全員集まってやったら壮観ですよ。
 全員白の体操服にすれば、黒い巻き寿司がよけいに目立つ。
 朝礼のように整列して、前に恵方巻委員が立ち「恵方巻かまえ」の合図で、全員右手の巻き寿司を大きく掲げる。
「本年の恵方、西南西の方向!」で全員がザッと西南西を向く。
「丸かぶり用意!」で巻き寿司を口の前に持ってくる、この時、巻き寿司は地面と並行に。右手で握り左手は添えるだけ。
「一同、食せ!」のホイッスルと共に、一斉に食べ始める。
 但し、勝手に食べてはいけない。
 恵方巻委員が鳴らす恵方笛(巻き寿司の形を模したホイッスル)にあわせて、1で噛みつき2で噛みきり、345とよく噛んで、6で飲み込む。これを全員一糸乱れることなく行う。全員の巻き寿司が同じ速度で短くなっていき、全員一斉に食べ終わる。
「恵方に座す歳徳神に礼!」の号令で、礼をすると、一同解散。
 この一糸乱れぬ儀式がYouTubeにアップされて、外国人から「JAPAN CRAZY!」とかコメントがつくと楽しいなあ。

 などと、一人で妄想を語っていると子ども達はあきれて去っていきました。


(更新 2010/2/ 4 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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