しかし、石破氏の考えをわかりやすく伝えようとすれば、テレビ局は、ある程度の時間を使って解説する必要がある。一方、安倍氏の側からは、非常に単純なメッセージしか出ていない。その前提で、両者の分量を同じにしろと言われると、石破氏の議論は、安倍氏側の分量だけしか報じてもらえない。結果、石破氏が望む「丁寧な」解説は全く行われないどころか、論点すら紹介されないということにさえなる。

 逆に言えば、「イメージ戦略」中心に持論を展開する安倍氏側に非常に有利な仕組みだと言って良いだろう。とりわけ、各地で大災害が相次ぎ、その報道で紙面や放送時間が取られてしまう中では、総裁選の憲法論の解説は、9条全文をそのまま温存する安倍氏と2項の戦力不保持と交戦権否認を削除する石破氏というところで報道が止まってしまう。そうなると、どうしても、安倍氏の方が平和主義的で、石破氏の方が好戦的だと取られやすい。まさに、そこが安倍氏側の狙いでもある。

 つまり、安倍氏は安全で石破氏は危険だというイメージ戦略だ。

■米朝開戦への対応が踏み絵 どちらが好戦的か

 9条改正論に関して、詳しい議論を国民に伝えることが難しいというのであれば、どうやったら、両者の「戦争」に対する考え方の差異を明らかにできるのだろうか。そう考えてみると、我々国民にとって最も差し迫った問題である北朝鮮問題への対応について議論すればよいのではないかと、私は考えた。

 実は、8月17日に石破茂氏と1時間半にわたって対談をする機会があった(「週刊プレイボーイ」)が、そこで、この問題を取り上げたのだ。私の質問はこうだ。「もし米朝交渉が決裂し、トランプ大統領が北朝鮮を攻撃するとしたら、日本はアメリカといっしょに戦うのですか?」

 これは、決して現実とかけ離れた質問ではない。現に、米朝交渉は停滞し、トランプ大統領が、再び圧力路線に戻ることを示唆する発言を行う中では、極めて現実的な質問と言ってよい。

 安倍氏なら、「仮定の質問には答えない」と言うだろう。石破氏も、非常にデリケートな問題だから、最後はうまくかわすのではないか。私は、そう予想していた。いわばダメもとの質問だ。

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石破茂の意外な回答は…