石破氏の論理は、以上のとおり、非常に明快だ。自身でも述べているが、氏の考え方は、イメージやみせかけで改憲を目指すのではなく、「強い論理」をバックに「丁寧に」国民に説明し、その理解を得たうえで改憲を目指すという考え方だとする。したがって、国民の意見が割れていて、改憲賛成論が十分に理解を得ていない現段階での改憲は、時期尚早だとして、次期臨時国会で自民党改憲案を提示すべきとする安倍首相の考えを「スケジュールありき」として、明確に批判している。

 石破氏の改憲の手続き論で言えば、国民の過半数ギリギリの賛成で無理矢理改憲するのではなく、それをかなり上回る支持を得るべきだということになる。石破氏の改憲案では、おそらく当分の間国民投票に持ち込むことは困難であろう。これについて、石破氏は、9条改正はそんなに急ぐべき課題ではないとしている。

 つまり、9条改正についてみると、論理的には安倍氏よりも本格的な改正を主張するものの、国民本位の議論を目指し、スケジュールありきで強行することはないという点では、安倍氏よりも石破氏の方が穏健だと言える。リベラル派から見れば、より危険度の低い総理候補ということになるだろう。

■自民党のマスコミへの要請は、石破氏との論戦封印狙い?

 自民党は、新聞・テレビに対して、「インタビュー、取材記事、写真の掲載にあたっては、内容、掲載面積などで各候補者を平等、公平に扱う」ことを要請している。安倍氏と石破氏に関する報道の分量を同じにしろという意味だ。マスコミ側は、もちろん、こんな要請は無視すればよい。しかし、実際には現場で「忖度」が働く。特にテレビ局はこれを杓子定規に守っているように見える。筆者が現場スタッフから得た情報では、あるテレビ局では、秒単位で両者の扱いについてチェックしている報道番組さえあるという。

 こうなると、石破氏は非常に不利だ。なぜなら、石破氏がどんなに「忍耐強く」「丁寧に」持論を説明したいと言っても、国民と直接接する機会は限られる。そこで、非常に重要になるのが、マスコミの報道だ。

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「イメージ戦略」が有利な仕組み?