まず第一に、私は、石破氏とは外交安保政策について立場が大きく異なる。しかし、対談を通じて、石破氏は、相手を威圧したり、論駁したりするような態度を見せず、淡々と持論を論理的に説明する姿勢に終始した。そのためか、私は、全く嫌な気持ちになることはなく、対談が終わって握手するときには、むしろ親近感さえ覚えた。意見が違っても、相手の言葉に耳を傾ける態度が徹底しているので、そういう印象を受けたのだと思う。この点は、国会での安倍総理の言動とは好対照である。

 もう一つ、小さなエピソードがある。どうして、私と対談したのかという問いに対して、リップサービスをしようと思ったのか、石破氏は、「日本官僚の中枢にいて、中を知った人の批判は現実味と説得力がある」と私を持ち上げる発言をした後、「古賀さんの書いたものは、」と続けた。普通なら、その後は、「ほとんど読みました」「すべて読みました」などと言うのが予想されるところだ。ところが、石破氏は、「3分の1くらい読んでいる。そうだよねと深くうなずける。そういう人はさほどいない」と続けたのだ。「3分の1」と聞いて、ガクッとなったが、逆に、「正直」な人だと思った。こんなところで、そんなに厳密さにこだわる必要はないだろう。私はその瞬間、この人は嘘をつけない人だなと感じた。

 どちらが危ないのか、そして、どちらが真に信頼できる総理になれるのか。それがわかるような論戦を期待したいのだが、その前に勝負は決し、結果として、「危ないリーダー」が選ばれてしまうのだろうか。

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