種牡馬となり莫大なお金を生み出しているディープインパクト (c)朝日新聞社
種牡馬となり莫大なお金を生み出しているディープインパクト (c)朝日新聞社
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 競走馬にとって重要な使命はふたつ。ひとつは現役時代にG1などのビッグレースを可能な限り多く勝つこと。そしてもうひとつは引退後に繁殖入りすることだ。特に1年に1頭しか生むことのない牝馬と違い、数十頭から数百頭に種付けする牡馬は種牡馬として大成できれば現役時代をはるかにしのぐ大金を関係者らにもたらしてくれる。後世に優秀な血統を残すことは、まさに競走馬の究極目標と言っていいだろう。

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 では実際にもっとも稼いだ種牡馬は誰なのか。その議論に入る前に、抑えておくべきポイントがいくつかある。まずは最近の種牡馬ほど有利なこと。これは繁殖技術の向上で1年に種付けする頭数が昔より飛躍的に増やせたこと、そして賞金が高額なビッグレースが次々と誕生していることが大きい。

 そしてレースの賞金平均額が世界的にも飛びぬけて高い日本に産駒を多く送り出す種牡馬、つまり基本的に日本で繁殖生活を送ることの多い日本出身の種牡馬が、産駒の収得賞金という観点では圧倒的なアドバンテージを最初から持っているということ。一部の例外的なレースを除けば重賞でも日本円で数百万円の優勝賞金しか出ない欧米と、条件戦でも1000万円以上の1着賞金に加えて入着どまりでも手厚く賞金が設定されている日本では、そもそもの前提条件が違う。これはもう種牡馬の優劣では覆せない現実なのだ。

 というわけで、世界の名種牡馬たちを産駒の収得賞金でランキングすると、昨年まで日本で6年連続のリーディングサイアーに輝いているディープインパクトがワールドチャンピオンということになる。『JRA』によると、昨年の収得賞金は58億3915万9000円。しかもこの数字はキャリアハイだった2016年の73億7053万1000円より目減りし、過去4年間で最低でもこの額だったのだから桁が違う。出走頭数の多さ、勝ち上がり率の高さ、クラシックでの無類の強さなどがかみ合った隙のない名種牡馬と言っていいだろう。通算の収得賞金額は2017年までに約400億円までに達している。

 ただしその結果として種付け料も半端ではなく、今年はついに4000万円に値上がり。これは公表されている種牡馬の中では世界トップであり、日本歴代最高の名種牡馬と誉れ高い父サンデーサイレンスの最高額と言われている2500万円を軽く超えているが、それでも産駒は飛ぶように高値で売れている。まさに日本競馬界の至宝なのだ。

 さて、前記したように産駒の収得賞金だけで話を進めてはディープインパクト以降もキングカメハメハなど日本の種牡馬ばかりが並んでしまうため、ここからは各国別にリーディングサイアーを見ていこうと思う。

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欧州や北米の名種牡馬は?