日本サッカーについての誤解の1つに「フィジカルが弱い」がある。逆にアフリカ勢のフィジカルは「凄い」ということになっている。
実は「フィジカル」にもいろいろあって、パワー、スピード、持久力などをゴッチャにしてしまうからよくわからなくなる。セネガルが日本に比べて優位だったのはコンタクトプレーでのパワー、20メートルを超えた場合のスピード、身長の高さだ。逆に日本が優れていたのは俊敏性と持久力。パワーとスピードに関して確かにセネガルは強烈だったが、足を止めない走力では日本が優位で、パワーやスピードでも何とか対抗できていた。
2010年の南アフリカワールドカップで、日本はベスト16に進出している。このときのチームもカメルーンと対戦しているが、フィジカルで劣勢だったという印象はない。松井大輔や大久保嘉人のキレのある動きや運動量はこの大会での日本の長所ですらあった。そもそも初出場の1998年フランスワールドカップでも、とくに体力面で弱かったとは思わない。
体格の差はある。身長と体重で日本選手は見劣りする。ただ、体格差が決定的になるのは主にゴール前だ。ハイクロスの競り合いでは身長とパワーがモノを言う。しかし、それ以外のプレーではそれほどはっきりした差などなく、日本代表の「フィジカルが弱い」はほぼ誤解と言っていい。ゴール前に関しても、2010年の田中マルクス闘莉王と中澤佑二のコンビは相手に見劣りしていなかった。今回の吉田麻也、昌子源も同様。空中戦での不利がないときの日本代表のフィジカルは弱くない。
セネガル戦前半の焦点は日本の左サイドだった。
推進力抜群のFWイスマイラ・サール、やはりスピードのある右SBムッサ・ワゲが攻め込んでくる。長友佑都でもぎりぎりの対応を迫られていた。セネガルはさらにCFのエムベイェ・ニアンが右寄りに流れてきてサイドからのボールを受け、それをリターンしてからファーサイドへハイクロスを送る攻撃を仕掛けていた。ニアンがボールサイドに流れることでマークしている日本のCB(昌子)を釣り出し、さらに吉田の頭越しに高いボールを送って勝負という狙いだ。実際、これがセネガルの先制点につながっている。