故人を身近に感じたいとして広がっている「手元供養」 (c)朝日新聞社
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故人を身近に感じたいとして広がっている「手元供養」 (c)朝日新聞社
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小向敦子(こむかい・あつこ)/高千穂大学人間科学部教授。老年学・笑い学。シニアとユーモアを研究の中心に置いている。米イリノイ大学(シカゴ校)で心理学部、同大学院で教育学研究科博士課程修了。著書に『セラピューティックと老年学』など
小向敦子(こむかい・あつこ)/高千穂大学人間科学部教授。老年学・笑い学。シニアとユーモアを研究の中心に置いている。米イリノイ大学(シカゴ校)で心理学部、同大学院で教育学研究科博士課程修了。著書に『セラピューティックと老年学』など

 お墓参りにはもっと行きたいけれど、遠くの寺を訪れるのも大変だし、清掃するのも維持・管理も容易ではない。そんな人に朗報! メンテナンスの必要なしに、思う存分、故人を偲ぶことのできる「手元供養」が今注目されている。『すごい葬式 笑いで死を乗り越える』(朝日新書)の著者・小向敦子さんによると、こんな驚きの技術が進んでいる。

【写真】『すごい葬式 笑いで死を乗り越える』の筆者・小向敦子氏

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 お墓参りには仏教の「三十三回忌」のように、これで「完」という終わりの節目がない。墓地で人気がある場所は、見晴らしのよい山頂や丘の上だったりする。老老参りになると、本気できつい。翌日は寝込んでしまうなど、身体を張った命からがらの墓参りになる。中に遺骨は入っていても、それをケアできる人がいない墓の存在も増えてきている。

 そこで、訪れたり清掃したりする必要がなく、かつ管理・維持も発生しない。これらのことから完全に手を切れる、手元供養が注目されている。

 一例としては故人の3Dフィギュアがある。もちろんこれは元気な時に作るもので葬送とは別のシステムだが、世界に一つしかない、実物そっくりな石膏製の立体プリントにしておけば、故人を感じられ、手に取って愛おしむことができる。

 しかも制作は0.01秒のスキャニングで済む。じっとしている必要がないので、ペット像も作れる。赤ちゃんの時・七五三・結婚式・長寿のお祝いなど、人生の通過儀礼ごとに制作しておけば、複数の像が残せる。手がけているのは、ドゥーブスリーディー株式会社で、価格は10センチの大きさで9800円。特別サイズの等身大も発注可能である。

■遺骨や遺灰でダイヤモンドを製造できる

 フィギュアもよいが、宝石もよい。とくにダイヤモンドは格別である。遺骨や遺灰、髪の毛や衣類など、炭素が含まれている遺品から、6カ月程度で人工的に製造できる。

 すべての骨を使うこともできるため、人間が死んで、ダイヤモンドに生まれ変わる、という夢のような話が現実になる。形見分けとして、身体の中から出た結石や金歯を残しても喜ばれるだろうが、ダイヤを配るのも悪くない。

 指輪を作れば、中指に父、薬指は母、小指はペットなど、遺族が随時身に着けておける。ネックレスやピアスにしてもよい。墓にお参りするまでもなく、仏壇を設けなくても、いつも一心同体でいられる。

 人工ダイヤの製造は2004年、スイスで創立されたアルゴダンザ社が世界の先駆けである。静岡市にあるアルゴダンザ・ジャパンのホームページによれば、300グラムの遺骨(成人男子の遺骨の4分の1~5分の1に相当する)から作る場合、1カラットのカットダイヤで253万円とある。

 現状では、市場に流通している天然のダイヤより、「人骨からつくる」人工ダイヤの方が高値となっている。この高低が逆転するときに、需要が一気に飛躍すると思われる。ダイヤモンドビジネスにとってのビッグバンが待ち望まれている。