一方、最近の森友学園、加計学園を巡る官僚の行動を見ると、国民が求める理想との落差の大きさに落胆せざるを得ない。例えば、財務官僚の佐川宣寿前理財局長や経産官僚の柳瀬唯夫元総理秘書官は、どうして本当のことを話さないのだろう。話しても命を奪われることはないのに、と思う。

 しかし、よく考えると、彼らは彼らなりに命懸けで「他者」のために尽くしているのかもしれない。その「他者」とは、もちろん、安倍総理である。安倍総理のために燃え盛る火の中に、まさに命懸けで火消しに向かい、全身火だるまになりながらも、なお安倍総理を守ろうと息絶えるまで働く。安倍総理にとっては、彼らこそ官僚の鑑。安倍総理のための近衛消防兵というようなものだ。国民栄誉賞を授与したいくらいの気持ちかもしれない。

 日本の危機は、火事に例えれば、まさに、ボヤから本格的な火事になる途上にある。これから火柱が上がり、放置すれば、全焼になるという状況だ。今ほど、日本のための「消防士」が求められているときはない。

 霞が関の官僚には、「安倍さんのための消防士」を辞めて、「国民のための消防士」になってもらいたい。そうなれば、彼らはヒーローとなり、「ありがとう」という国民の感謝の言葉で、心が満たされるだろう。そして、その時こそ、心の底から、「官僚になってよかった」と思えるはずなのだが……。

(文/古賀茂明

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