世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。取材やインタビューの基本は英語である。それもブロークン・イングリッシュゆえ、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした"ありえない英会話"を紹介する本連載。今回は観光地ギリシャの裏の顔、定番の詐欺の撃退法を紹介する。
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ジャーナリストである丸山ゴンザレスは、世界の危険地帯を旅していて、観光地なんかには目もくれない……。一般的にはそんなイメージが強いだろう。それは間違いではない。だが、取材の一環で興味がなくても観光地に行くこともある。
以前、ギリシャのアテネを訪れた際に、世界的な観光地であるアクロポリスの丘に行ったことがある。パルテノン神殿をはじめとして世界遺産が集まっている場所で、多くの観光客でごったがえしていた。
もともと、取材の一環で何人かに声をかける予定であったのだが、一息ついてから開始するつもりで博物館の入り口近くにあったベンチに腰を下ろした。すると、男性(声質とシルエットでわかった)が話しかけてきた。
「Are you Chinese?」(中国人ですか?)
「No.」(違います)
「Korean? Japanese?」(韓国人? 日本人ですか?)
「Yes. I'm Japanese.」(日本人ですが)
観光地でよくある土産物や大道芸の押し売りかと思ったので受け流そうと思って、顔も見ずに答えた。だが、思っていたより食い下がってくる。欧米では東洋人への国籍質問は、この種の仕事をしている連中にとっては、ある種の定番「きっかけ」である(ちなみに筆者は、第一印象でメキシカンに見られることもある)。そのため、この手の質問には慣れている。辟易しつつも機械的に返事をして、こちらが無関心であることを伝えてしまえば、大抵はあきらめてどこかに行く。少なくともまともな客引きぐらいだったらそんな程度である。
「Your English is very good!」(あなたの英語は素晴らしい!)