出口のないトンネルに入った日本政治。9月8日に終わった通常国会を東大客員教授の御厨貴(みくりや・たかし)氏と東大教授の松原隆一郎氏が振り返った。

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松原:野田佳彦首相(55)がここまで消費増税にこだわったのは、私は「埋蔵金」の代わりだと理解しています。民主党のマニフェストに書かれた政策の財源は埋蔵金だったわけですが、結局それは見つからなかった。これが最大の公約違反です。それなら、どこか違うところからお金を引っ張ってくるしかない。そう説明をすればいいのに、野田さんは「膨らむ社会保障費のために必要だから」としか言わない。だから「ああ、財務省に言わされているんだな」と思われるんです。

御厨:事実そうでしょう。

松原:でも、社会保障改革についても3党合意で譲歩し続けたから、中身はスカスカですよね。じゃあ、野田さんが何のために消費増税するのかわからないじゃないですか。

御厨:それでもとにかく通した。ただそれだけなんです。民自公という巨大与党によって「決める」ことはできるようになったけど、議論も中身もない。まさに国会は「虚ろの城」と化してしまいました。

松原:この20年間、二大政党制を目指してきたはずなのに、結果は既成政党の終焉だったわけですか。

御厨:そんな国政の混乱を見透かしているのが橋下徹大阪市長(43)率いる大阪維新の会です。国政政党化しても、橋下さんは大阪市長のまま党首を務めるという。これは非常に利口なやり方で、国政の外にいる限り、彼は理想論を言い続けられるんです。彼が国政に出た途端に維新の会は終わります。いくら支持が増えているといっても、国政でいきなり第1党をとれるわけがないから、自民党かどこかと連立を組まざるを得ない。その途端に妥協を余儀なくされる。それを見た国民は「なんだ、結局、政府に入りたかっただけなのか」と思ってしまうわけです。

松原:市長という黒幕のまま国会を牛耳って、あわよくば途中経過をすっ飛ばしていきなり首相になりたい、ということなんでしょうね。

※週刊朝日 2012年9月21日号