そのことは、かつて『なんてたってアイドル』を手掛けた秋元氏が後に発表し、歌詞の中でアイドルのスキャンダルやネット炎上の問題にも触れている、AKB48グループのメンバーで結成されたアイドルユニット「ニャーKB with ツチノコパンダ」の楽曲『アイドルはウーニャニャの件』の中でも適格に表現されている。
社会的な環境の変化により、かつてのスター性や神秘性が成立しにくくなる中、多くのアイドルたちは握手会やSNSを通じて日常的にファンと交流し、より身近な存在になることで、親近感を新たな魅力としてファンに提示していく方向へと向かっていく。
だが、たとえ時代の流れや環境の変化により成立しづらくなったとはいえ、ファンがアイドルにスター性や神秘性をまったく求めなくなったかというとけっしてそうではなく、結果的に求めづらくなったというのが実情だろう。
それが、大きな注目を集める国民的な知名度を誇る人気アイドルならば、なおさらのことである。
ファンの中には、アイドルのスキャンダルが報じられる中、半ばあきらめに近い感情を持ちつつも、心の奥底ではアイドルでいる限り、プライベートでもアイドルでいることを求める者もいる。
それが多感な時期を過ごす少女たちにとってどれだけ難しいことであり、今の時代にはとてつもなくハードルの高いことであっても……。
卒業コンサートのアンコールで純白のドレスに身を包んだ渡辺は、多くのファンや仲間、スタッフを前に、「11年間、私が信じて歩んできた道は間違っていなかったんだなと思うことができました」と感謝を口にした。
彼女の比類なきアイドル人生と、卒業コンサートでのその言葉に救われた者はファンのみならず、無数にいることだろう。(芸能評論家・三杉武)