諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した
諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した
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元SEALDs諏訪原健「生まれつきの茶髪を黒に染めろという時代遅れに唖然」(※写真はイメージ)
元SEALDs諏訪原健「生まれつきの茶髪を黒に染めろという時代遅れに唖然」(※写真はイメージ)

 大阪府立高校の生徒が、生まれつき髪が茶色いのにもかかわらず、黒染めを強要され、精神的苦痛を受けたとして、大阪地裁に訴えを起こした。しかも頭髪を理由に学校行事への参加を禁じたり、「学校に来る必要はない」と言われたりすることまであったという。まるで生徒には人権がないかのような指導には、唖然とせざるを得ない。

 ニュースを見ながら、私は自分の高校時代を思い出していた。私は鹿児島県の鹿屋市というところで育ったが、私の高校では数週間に一度、「頭髪服装検査」が行われていた。検査では、前髪が少しでも前髪にかかったらダメとか、ズボンの裾が少しでも地面についたらダメとか、そういうことを異様なほど細かくチェックする。生徒が列をなして順番に検査される様子は、出荷前の製品がベルトコンベアーに載せられて、規格に合っているかをチェックされているかのようだった。

 この「頭髪服装検査」は、生徒手帳の中にある「生徒心得」に示された服装を基準にして行われるのだが、何の意味があるのかと思う規則が多く書かれていた。「生徒心得」には、かつての豊かな時代の残り香を感じるような「ディスコに立ち入らない」といった文面もあったから、おそらく私たちが生まれるより前にできた文面が、そのまま使われ続けているのだろう。服装に関する記述も、どこか現実とかけ離れていた。

 そうは思いながらも、不合格になれば、担任や学年主任、生徒指導などの教員のところに指導と再検査を受けに行き、合格したことを証明するために押印をもらうという、通称「スタンプラリー」を行うはめになる。しかも一度指導を受けに行くことになれば、次回からの検査でも「指導を受けるような人間」という目で見られることになる。私たちは検査をパスすることに必死だった。

 私はこの慣習が馬鹿らしくて仕方なかった。百歩譲って、「社会に出た時に、TPOに合わせた服装ができるように」という教育的な目的があるのだとしても、検査を通じて強制することが有意義だとは思えない。検査というやり方は、具体的な指示を出されて、ペナルティを課されなければ、自分の頭で考えることもできないような人間をつくり出すだけではないか。そうだとすれば、なぜこの規則が必要なのか、なぜ守る必要があるのかを自分たちで考えさせるほうが、意味があるのではないかと感じていた。

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