そうした競争の新たな第一歩ともなるサウジアラビア戦、ストライカーらしいギラギラした気持ちで出場チャンスを待つのは武藤だけではない。23歳の久保裕也は昨年11月にハリルジャパンで初招集され、3月のUAE戦とタイ戦で2試合連続の1得点1アシストを記録するなど一躍、右サイドのレギュラーに定着した。

 しかし、今シーズンはベルギーリーグでなかなか点が取れず、大一番のオーストラリア戦は後半44分から、しかも殊勲の先制点を決めた22歳の浅野との交代だった。久保にとっても、サウジアラビア戦は自身の価値を示すための重要な一戦となる。

「どんなシステムで、どこで使われても、やることはあんまり変わらないと思うので、僕はとにかくゴールを狙いにいくことが一番のアピールになる。ポジションは正直どこでもいいので、ゴールに絡めるプレーができたらいい」

 そう語る久保は今でこそ右ウィングのイメージが強くなっているが、スイスのヤングボーイズからベルギーのヘントに移籍した当初は右サイドでの適応に苦しんだという。しかし「右利きなので右サイドから仕掛けるイメージが最初はあまりなかったですけど、そういう仕掛けのイメージもやっていくうちに付いてきました」と今では問題ないと力を込める。ただ、本大会に向けては“個の力”をさらに付けていきたいという。

「自分でボールを持った時に相手を1枚はがせるぐらいの力があれば状況も変わると思いますし、そういう個の部分を伸ばしていけたら、伸ばしていかないといけない」

 もちろん、そうした個人の打開力もゴールという明確な結果に結び付いてこそ、ストライカーとしての真価につながる。ゴールが決まるときの感覚については「より落ちついている時の方が決められると思う」と語ったが、「でも入るときは入るし、入らないときは入らないという」と割り切りの良さも窺わせている。

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