まるか食品がそうした風向きの変化に着眼するきっかけとなったのは、2012年に限定商品として発売され、その後レギュラー商品として復活を遂げた「ペヤング 激辛やきそば」の大ヒットだ。

「飲み物なしでは完食は難しい」と言われるほど辛いこの商品は、なるべく多くの消費者をターゲットにするのが定石とされるインスタント食品業界において、当時としては異例の存在。予想通りSNSには「辛すぎる」という声が溢れたが、その多くはネガティブなものではなかった。多くの消費者がまるで挑戦系メニューに挑むように、その痛烈な辛さを楽しんでいたのだ。

「これによって、一見度が過ぎるような商品でも、うまくいけば楽しんでいただけるのだという成功体験を得ました。せっかく新商品を発売しても消費者の方々に知ってもらえなければ真価を発揮できません。SNSなどでの話題を通じて興味を抱いてもらい、手にとってもらうことが大切になります」(小島氏)

 企画の段階から、一部の社員から驚きの声があがったという「チョコレートやきそばギリ」。だが、小島氏はその成功に熱い期待をかける。

「やきそばの基本原料は小麦粉。ならばチョコレートと組み合わせても違和感はないはずです」

●記者が自作したチョコレートやきそばの味は……

 ならばぜひとも味を確かめてみたいというのが人の性だ。

 しかし取材の段階(12月中旬)では生産ラインを調整中のため、試食品の提供が難しいという。そこで、現在店頭に並んでいる通常の「ペヤング ソースやきそば」と市販のチョコレートを組み合わせ、一足先に味わってみることにした。もちろん実際の商品に使用されるチョコレートとは別物であるため、完全に同じ味わいにはならないだろう。だが、その雰囲気を掴むことはできるはずだ。

 お湯をいれて3分経過したペヤングを丹念に湯切りし、やきそばソースを投下する。ここまでは慣れ親しんだペヤングの作り方だ。胸を焦がすソースの香り、つややかな麺、ところどころに顔を出すキャベツの緑。思わずにんまりしてしまうほど見事な、そしていつも通りのペヤングだが、ここから未知の領域に踏み込んでいく。

 溶かしたチョコレートを回しかける。チョコレートは思い切って板チョコをまるごと1枚使用した。正直なところ、非常に背徳的な気分に襲われたが、開発担当者が自信をもって「違和感はないはず」と言ってくれた調理法である。ネガティブな雑念を振り払って、やきそば全体にチョコレートを絡ませた。

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