完成した自作「チョコレートやきそば」の全貌は果たして極めて普通だった。やきそばソースもチョコレートも同じく茶色。何も言われずにこれを出されたら、誰もが普通のやきそばだと思うはずだ。だが、顔を近づけると、その禍々しいまでのチョコレート臭に慄然とする。やきそばにしか見えないものからチョコの香りがする、という異常な状況が、記者がこれまでの人生で積み上げてきた常識を揺るがすのだ。

 意を決して、すすり込んだ。

 率直に言おう。生命の危機を感じるほど衝撃的な味だった。まず、チョコのむせ返るような甘い香りが鼻腔を突き抜ける。その次の瞬間、力強いやきそばのソース味が全力で牙をむく。そして、濃厚な甘さと豪然たる塩気が決して調和することなく口のなかで暴れまわるのだ。

 違和感どころではない、例えるのなら、口内で屈強なプロレスラーがくんずほぐれつ死闘を繰り広げているような感覚。小島氏は「バレンタインデー用のネタにも使える」と語っていたが、もしもこんなやきそばをもらったら「この人は私のことがきらいなのだな」と思うことだろう。

 ところがである。ことの次第を小島氏に報告すると、「え? やきそばソースをチョコレートを混ぜちゃったんですか!?」という返事が返ってきた。

「やきそばソースとチョコレートは、おそらく合わないかと……。我々が開発した『ペヤング チョコレートやきそばギリ』にはやきそばソースはついていません。やきそばにあわせて特別に配合したチョコレートソースと、クルトンといちごのかやくで食べていただきます。実際社内の試食会では『あれ、チョコだ!』『おいしい』といった声があがり、非常に好評でした」(小島氏)

 1人で先走り、見当違いの調理法をした上に、開発担当者ご本人に「あんまり美味しくなかったんですが」などと報告するなど醜態の極みである。だが、得た教訓は2つある。まず、普通のソース焼きそばにチョコレートを混ぜるべきではない。そして、新たに発売されるペヤングのチョコレートやきそばは期待がもてそうだということだ。発売日は2017年1月16日。ペヤングの意欲的な挑戦は実を結ぶのか、その先行きを固唾をのんで見守りたい。(ライター・小神野真弘)