7月4日深夜。世界各地にいるイスラム教の聖職者たちが新月を確認し、およそ1か月に渡ったヒジュラ暦(月の満ち欠けをもとにしたイスラム教社会で使われている暦)の第9月、ラマダーン月が5日で終わり、6日から新しい月となることを宣言した。
日本では東京・代々木にある「イスラミックセンター・ジャパン」がラマダーン明けを公式に発表。これを受けて、東京・豊島区、大塚にあるモスク(イスラム教の礼拝所)「マスジド大塚」では、ラマダーン明けを祝うお祭りの準備がはじまった。
断食を行なうことで有名なラマダーン月は、イスラム教徒にとって神聖な1カ月だ。断食は大切な義務のひとつで、日の出から日の入りまで、いっさいの飲食を絶つ。妊婦や赤ちゃん、それに旅行者はこの義務を免除されるとあるが、異国にいるイスラム教徒の多くは断食を欠かさない。日本にいるイスラム教徒も同様だ。
そして7月6日、ラマダーン明けを祝うお祭り「イード」が行なわれた。1年に一度、新しい月を祝うこのお祭りは、日本で言えばお正月に近いかもしれない。
JR大塚駅南口の商店街には、色とりどりに着飾ったイスラム教徒の人々が早朝から集まり「マスジド大塚」に向かっていった。久しぶりに会う顔もあるのだろう、握手をしたり抱き合ったりする姿も多い。
「マスジド大塚」の前まで行くと、道路はイスラム教徒でごった返し、車は通行止めになっている。手作りのお菓子や、ケバブを売る屋台まで現れて、大盛況だ。
「イードはまず、ラマダーン明けを感謝するお祈りからはじまるのですが、マスジド大塚の中には200人ほどしか入れない。だから交代で祈るんです。朝からもう、4回転くらいしたんじゃないかな」と、参拝者のひとりが教えてくれた。
意外にも日本人の姿も目立つ。その多くがイスラム教徒と結婚している人たちだ。国はさまざまだが、イスラムという絆でつながった人々の輪のなかに、日本イスラム文化センター会長のシディキ・アキールさんがいた。
「もともと、このイードのお祭りをする場所がほしくてね」
日本で暮らすイスラム教徒が礼拝する場所であり、日本人との交流の場としても機能している「マスジド大塚」ができたのは、1999年のこと。それまでイードは、ホテルの大広間などを転々として行っていたという。
日常の礼拝は池袋のマンションを借りて行なっていたが、手狭な上に家賃が高い。そこで、池袋の隣駅だがぐっとリーズナブルで庶民的な街、大塚でビルを買ってしまおうと思い立ったのだという。豊島区やその周辺のイスラム教徒からの寄付などによって「マスジド大塚」は完成した。いまでは、イスラム教徒向けの幼稚園も隣接しており、これも運営。2017年には小学校も増設する予定になっている。
日本には小さいところも含めると200~400のモスクがあるのでは、といわれるが「マスジド大塚」はそのなかでも規模の大きなものだ。
「1日5回の礼拝や、コーラン教室などを行なっています」(シディキさん)
その言葉通り、内部は礼拝所や、経典を納めた図書館がその大部分を占める。イマームと呼ばれるイスラム教の指導者も、ふたりいるそうだ。イスラム教の休日である金曜日には、150人ほどのイスラム教徒が集まる。バングラデシュ、アフリカ系、パキスタン……留学生も、会社員もいれば、起業している人もいる。