大津市の中学2年生がいじめが原因で自殺した事件を受け、ボクシング元世界王者の内藤大助さんは、かつていじめられ深く傷ついた過去を振り返り、いじめはいつか終わるとメッセージを送る。

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 ぼくはクラスでいちばん体が小さかったんですよ。ガリガリにやせててね。母子家庭で、家も貧しかった。貧乏をもじって、「ボンビー」「ボンビー」と、みんなの前で毎日毎日からかわれて、因縁をつけられては暴力をふるわれた。母子家庭のことを、「国から援助してもらいやがって」とののしられたり。貧乏は家庭の事情じゃないですか。身内のことを言われるのはつらかったなあ……。

 あるとき、ぼくが過去のいじめを告白した新聞記事を見て、当時のいじめっ子が、いきなり訪ねてきたんです。「いじめてたの、だれよ?」と聞く。思い切って、「お前のことだ」と答えると、彼は「やっぱり、おれのことか」とうつむきました。ずっと「この野郎」と思い続けてきた相手の初めて見せた態度でした。その瞬間、ぼくの中で「終わり」と思えたんです。許すことはできないけど。

 いじめに耐えたり、我慢することなんかない。とにかく、一人で抱え込まず、いじめられていると言ってほしい。親でも先生でも友達でも。それがだめなら、いじめ相談窓口に電話したっていい。誰にでもいいから、声をあげてほしい。

 とにかく「絶対死ぬな」と伝えたい。ぼくも、本当につらいとき、自分で死ぬ勇気はなかったけど、殴られているとき、このまま殺されてしまうのかな、ぼくが死んでしまえば、相手が罪に問われるからいいや、と思ったこともあった。

 いじめはいつか必ず終わる。人生には大逆転がある。いじめっ子なんかに殺されなくてよかった、生きていてよかった、そう思うときが必ず来る。

 君は絶対大丈夫だ。

※週刊朝日 2012年8月3日号

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