月間MVPの受賞会見で笑顔を見せる阪神の原口 (c)朝日新聞社
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 プロ野球は毎月、1カ月間で最も活躍した選手を各リーグ、投打ごとに1人ずつ合計4人を「日本生命月間MVP賞」として表彰している。5月のセ・リーグ打者部門には阪神の7年目、原口文仁捕手(24)が選ばれた。阪神の打者としては2010年8月の鳥谷敬内野手以来6年ぶりだった。

 原口の受賞は注目を集めた。理由がある。打者で育成枠の経験者としては、両リーグを通じて初の受賞となったからだ(育成経験のある投手は09年8月に中日チェン・ウェイン=現マーリンズ、12年7月に巨人山口鉄也が受賞している)。原口は09年ドラフト6位で帝京高から阪神に入団。腰を傷め、12年オフに育成契約に切り替えられた。それから3年間、育成枠でプレー。昨年のオフ、金本知憲新監督にパンチ力のある打撃が注目され、今年4月27日に支配下登録に復帰したばかりだった。

 支配下に復帰した翌月、1軍入りどころか、リーグで最も活躍した野手として表彰を受けた。月間打率3割8分、5本塁打、17打点。このシンデレラストーリーを、野球に詳しくない人に説明するとしたら、以下の感じだろうか。

 ~ある会社に営業マンとして入社して3年。大きな契約こそなかったが、徐々に実力をつけ始めていた。ところが、病気のため営業で働けなくなった。その後、病気は治癒したが、営業からは外され、正社員から契約社員となった。給料は減少した。ところが、転職もちらつき始めた昨年、新たな上司が赴任。潜在能力を買われて再び営業の一線に復帰すると、全国の営業所でナンバーワンの実績をたたきだし、社長賞を受けた~

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