



滋賀県人の琵琶湖愛が止まらない。滋賀県にある日本最大の湖、琵琶湖。県の中央にどーんと位置し、面積は県の約6分の1を占める。関西の水がめとして重要な役割を果たし、一説によると、大阪、京都府民と口論になった際の滋賀県人の決め台詞(?)は「琵琶湖の水止めたるぞ!」らしい。滋賀県人にとって、琵琶湖は特別な存在なのだ。
その思いは随所に表れる、というかにじみ出る。琵琶湖と「Mother Lake」という言葉を組み合わせた県のシンボルマークは、県庁職員の名刺にも印刷されている。「琵琶湖しかないから」と言いながらも、飲み会ではホンモロコやスジエビといった琵琶湖で獲れる魚介類のおいしさを力説する。スポーツチームや施設、自治体の計画にも琵琶湖絡みの名前を付けるなど、枚挙に暇がない。そんな郷土愛の一端を紹介したい。
■観光客向けのはずが… 県出身者の秘めた愛
琵琶湖をモチーフにした「びわこ文具」が密かな人気を呼んでいる。文具メーカー、コクヨのグループ会社「コクヨ工業滋賀」(滋賀県愛荘町)が開発したもので、琵琶湖固有種のニゴロブナや、釣り、カヌーといった琵琶湖と人とのかかわりをデザインした「びわこマスキングテープ」や、琵琶湖型のクリップ、ふせんといった約5種類の個性的な文具を展開する。
同社は環境保全の取り組みとして、07年から琵琶湖の水辺に生える植物、ヨシを原料にしたノートやコピー用紙などの「ReEDEN(リエデン)」シリーズを販売していた。しかし、「お菓子だけでなく、もっと滋賀らしいものをお土産に持ち帰ってほしい」という思いから、琵琶湖をテーマにしたびわこ文具を14年に生みだした。リエデンの商品を使ってもらい、ヨシの活用に協力してもらう狙いもあるという。
15年には、久田工芸(滋賀県東近江市)がデザイン、製作した交通安全を啓発する飛び出し坊や「とび太くん」をモチーフにした「とび太くんふせん」と「とび太くんヨシノート」を追加した。「お土産文具」という位置づけのびわこ文具だが、「実は県内の方に大きな反響をいただいている」(同社)という。
文具を扱うお店では、「友人に配る」という県民や、年末年始などに帰省した県出身者が、まとめ買いする姿がよく見られるという。同社の女性担当者は「皆さん琵琶湖を好きだけど、その思いはこっそり秘めているのですね。『地元愛』を感じることができてうれしい」と喜ぶ。
彼女によると、琵琶湖は「おもてなしのドライブコースやレジャー、湖魚のお食事、環境学習、そして失恋した友人のなぐさめスポット(琵琶湖女子あるある、だそうな)として、いろいろな恩恵を受けている」そうだ。地元愛をさりげなくアピールできる文具が、滋賀県民の琴線に触れるのだろうか。