『日本のエリート リーダー不在の淵源を探る』(朝日新書)
橘木俊詔著
定価:821円(税込み)
Amazonで購入する
この記事の写真をすべて見る

「世襲政治家」は批難されるべきか、そうではないか。

 一般的に、両親や祖父母などの親族から選挙区を受け継いだ者が世襲政治家と言われる。いわゆる「ジバン」「カンバン」「カバン(選挙資金)」といった選挙で有利となる「三バン」を引き継ぐため、選挙に圧倒的に強い。

 なかでも首相経験者における世襲の優位性は際立っている。戦後の首相経験者、吉田茂氏から海部俊樹氏まで17名のうち、鳩山一郎氏以外の16名の父親は国会議員ではなかったが、宮沢内閣から現在の第3次安倍内閣までの首相経験者14名のうち、国会議員を父に持つ人は実に9名(宮沢喜一氏、羽田孜氏、橋本龍太郎氏、小渕恵三氏、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏、鳩山由紀夫氏)。

 こうした世襲政治家の問題について、京都女子大客員教授の橘木俊詔氏は自著、『日本のエリート リーダー不在の深淵を探る』の中で、自身が過去に実施した世襲国会議員の分析を紹介している。

「第1に、政党別に世襲議員の比率を見ると、52%が自民党であった。(中略)第2に、卒業した大学名を調べると、25%は慶応大学の出身者であった。いわゆる坊ちゃん・嬢ちゃん大学として有名な慶応大学には、政治家、実業家の子弟が入学する比率が高いことの反映である。(中略)第3に、大学卒業後は一時期、民間企業やマスコミで働いてから父親の秘書を経験して、選挙区の地盤を受け継いでから出馬するというパターンである」(同書より)

 もっとも、2世・3世の政治家は日本に限った話ではなく、アメリカのジョージ・ブッシュ父子や韓国の朴正煕(パクチョンヒ)・槿恵(クネ)父娘、さらに最近なにかと話題のフランスの極右政党「国民戦線」のジャン=マリー・ル・ペンとマリーヌ・ル・ペン父娘など、海外でもよくあることだ。

次のページ