最高検は6月27日、虚偽捜査報告書を作成したとして刑事告発された田代政弘・元検事(45)とその上司らの不起訴処分を発表した。まさに「身内」に対しての甘さが露呈した形だが、その"言い訳"に最高検が用意したのは、常識的には信じがたい「シナリオ」だった。
最高検の調査によれば、田代元検事の虚偽報告書の作成経緯はこうだった。
問題の報告書が作られたのは2010年5月17日、陸山会事件を巡って、検察審査会で小沢一郎・民主党元代表への1度目の起訴相当議決が出た直後だった。石川知裕衆院議員を取り調べた田代元検事は、上司であった木村匡良検事から、石川議員が小沢氏の事件関与を認める調書だけでなく、調書作成の経緯を報告書にまとめるよう指示された。
そもそも報告書を作ることを意識していなかった田代元検事はメモをとっていなかったが、「わかりやすく、具体的に」という指示を受け、上司への報告用であろうと、記憶を喚起しながら一問一答式にまとめた。その際、4カ月近く前に石川議員を取り調べた際の証言と「記憶がごっちゃになってしまい」、虚偽報告書になってしまったという。
言うまでもないが、常識的に考えてこんなシナリオは信じがたい。元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士がこう指摘する。
「石川議員が隠しどりをした取り調べの録音記録と、問題の報告書を比べると、同じやりとりはほとんどない。報告書全体が事実ではないんです。さらに、記憶がはっきりしないにもかかわらず、あれほどリアルなやりとりを書くのは『間違っても構わない』という未必の故意があったと考えられても仕方ないでしょう」
取り調べを受けた当事者である石川議員も言う。
「田代元検事がメモをとっていなくても、立ち会い事務官はメモをとっていた。記憶だけで書いたとは考えられません」
※週刊朝日 2012年7月13日号