冷え込みが増し、乾燥する季節を迎えて気になるのがインフルエンザ。今シーズンもできる限りの備えで臨みたいところだ。こうしたなか、体によい栄養素として広く知られているドコサヘキサエン酸(DHA)が、インフルエンザの予防や、悪化の抑制にも応えてくれるという気になる研究結果が、DHA・EPA協議会のニュースレターで紹介されている。

 秋田大学、大阪大学などの共同研究によると、DHAから体内で作られる代謝物(プロテクチンD1)には、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する働きがあるという。

 インフルエンザ感染12時間前と感染直後にDHA代謝物を与えたマウスは、与えなかったマウスよりも生存率が改善。この結果から、DHA代謝物の投与がインフルエンザに対して予防的に働くことが分かった。また、インフルエンザ感染から2日後に抗インフルエンザ薬を投与したマウスのうち、感染2日後、3日後、4日後にDHA代謝物も与えた場合には重症マウスの生存率が改善された。これにより、予防だけでなく治療にも有効である可能性が示唆されるという。

 インフルエンザは、体内に侵入したウイルスによって細胞の核に放出されたRNA(リボ核酸)が増幅し、核の外に拡散したRNAによって新たなウイルスが作られて増殖していく。DHA代謝物がウイルスにどのような影響を与えているのか、培養細胞を用いた研究でその仕組みが明らかになった。

 インフルエンザウイルスに感染した細胞にDHA代謝物を投与すると、遺伝子情報を担っているRNAの発現量が低下し、ウイルスそのものの量を抑えるのだ。つまり、DHA代謝物はRNAの核外への移動を抑制し、これによってウイルスの増殖を妨げることで、インフルエンザの予防と治療に有効な働きがもたらされるのだという。

 頼もしいヒーローのように思えてくるDHAにも弱点はある。酸化しやすいという点だ。体内で酸化すると、老化などを進める酸化ストレスの原因にもなるという。これを防ぐためには、ビタミン(ビタミンCやE、ベータカロテンなど)、亜鉛やセレンなどのミネラル、ゴマのセサミンやワインのアントシアニンなどのポリフェノールなど抗酸化作用を持つ成分と一緒に食べることだ。

 ニュースレターでは、DHAやEPAが豊富に含まれる旬の魚を使った、料理研究家の浜内千波さんのレシピも紹介。「ブリのあつあつ茶漬け」は、熱湯や熱いお茶をかけて、ブリを半生の状態で食べるのがおいしい手軽なメニュー。セサミンを含むゴマをまぶせば、抗酸化作用も期待できる。

【参考リンク】
DHA・EPA協議会ニュースレター http://www.dhaepa.org