目の前に仕事があるという恵まれたところからのスタートだったので、私には「俳優になりたい」と思って目指した期間がありません。仕事をきちんとやるためにとにかく必要な技術を身につける、その積み重ねでしかありませんでした。そこにコンプレックスを抱いていたんです。強い思いや熱意を持って俳優を目指し、実際に仕事をするところまでたどり着いた人の持つエネルギーは自分の中にはないな、と。でも、今はそれも含めて、自分らしさかなと解釈しています。
──俳優業のみならず歌手業や朗読など「声」を使った仕事でも引く手あまた。「同時に考えなくてはいけないことを複数持つ」という忙しさを初めて体験していると言う。
22年は積極的にドラマに挑戦しました。ドラマはあまり経験がなかったので、新しいことをやってみることは、自分にとって良いことだと思って。ドラマの現場に行くとどうしても瞬発力が求められると感じます。そのためには、瞬時に対応できる身体を鍛えておかなくてはいけない。その場で学びながらでは対応が追いつかないと感じて。自分はまだまだそれに対応できるほど人間もできていないし、技術もないと感じる瞬間がたくさんありました。人前に立たせていただく機会や、取材で「環境が変わったんじゃないですか」という質問をされる機会が増えた今こそ、変わらずに学び続ける姿勢を持ちたいです。
──22年を振り返ってどのような一年だったか。
初めてミュージカルに挑戦したり、ドラマに多く出演したり。舞台を1年に2本やるということも新しい経験でした。そう思うと、すごく新しいチャレンジができたと思います。自分のできることとできないことを改めて見直す一年でもあったので、それをまた23年につなげていきたいです。
(聞き手/ライター・坂口さゆり)
※週刊朝日 2023年1月6-13日合併号