LOVOT/内蔵された50超のセンサーが外部刺激を感知し、臨機応変に動きを変える。瞳のパターンは10億通り以上。感情によって鳴き声も変わる(撮影/写真部・片山菜緒子)
LOVOT/内蔵された50超のセンサーが外部刺激を感知し、臨機応変に動きを変える。瞳のパターンは10億通り以上。感情によって鳴き声も変わる(撮影/写真部・片山菜緒子)

「ドラえもん」が描いた世界が現実になりつつある。さまざまな機能を搭載したロボット開発や、エアコンスーツやまんが製造箱など、数々の「ひみつ道具」が描いたテクノロジーの開発が進んでいる。AERA2020年3月16日号から。

【写真特集】ドラえもん「ひみつ道具」の最前線

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 昨年12月、GROOVE Xは、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の出荷を開始した。コンセプトは「役に立たない、でも人を元気にする」ロボットだ。

 同社の代表取締役で、LOVOTの生みの親である林要(はやしかなめ)さん(46)は、その狙いをこう語る。

「従来のロボットは、仕事の生産性を上げ、収入や余暇の時間を増やすことで“間接的に”人を幸せにしてきました。一方、LOVOTは、ペットと同じようにめでることで、人の心を直接癒やし、幸せで満たしてくれるロボットなんです」

 開発にあたっては、動物行動学の専門家を交え、ペットの行動パターンや習性を分析した。部屋の中を自由に動き回るだけでなく、搭載しているAI(人工知能)に学習させることにより、名前を呼ぶと振り向いたり、家族の後ろをついてきたりするようにもなる。たまに名前を呼んでも無関心だったり、頭をなでると眠ってしまったりするところも、本物のペットにそっくりで愛らしい。

「最終的には、ドラえもんのように『人の成長にコミットできるロボット』を作りたいですね。ドラえもんは、妹のドラミよりも出来が悪いロボットとして描かれていますが、だからこそ、のび太と固い友情を結べたのではないかと、私は思うんです。もしも優秀なドラミがパートナーだったら、のび太は劣等感でつぶされていたかもしれません」

 一方的に与えられる関係性では人は成長できないし、幸せにもなれない。人間とロボットがいかに「インタラクティブ(双方向)」な関係性を構築できるかが、今後のAI・ロボット社会の発展においては重要になると、林さんは語る。

 ドラえもんが誕生するまでにはさすがにまだ時間がかかるだろうが、「ひみつ道具」に近い製品は続々と生まれている。

 例えば、読みたい漫画を自動で描いてくれる「まんが製造箱」。キオクシア(旧東芝メモリ)は、手塚プロダクションらと組み、AIの力を借りて、約31年ぶりに手塚治虫の“新作”漫画『ぱいどん』を制作した。

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