現在はジャニーズにしろAKBにしろ、アイドルである「自覚」や「責任」がとにかく強い。お笑い芸人やアナウンサーもしかり。端から「アイドル的文脈でお納めください」と明記してある感じで、もちろんそれはそれで客側も消費目的が明確になって楽ではありますが、個人的には「え? 何で私が? 僕が?」と状況を把握できていない系のアイドルをもっと見たいというのが本音。その点で言うと、現在のテレビにおいて「無自覚なアイドルポテンシャル」で人気者になっている最たる例は、副職でテレビに出ている若い文化人やクリエーターたちではないでしょうか。中でも古市憲寿さん(社会学者)、前田裕二さん(SHOWROOM社長)、箕輪厚介さん(幻冬舎編集者)の3人は、まさに「副職系アイドル御三家」と命名するにふさわしい人材です。
すでにキャーキャー言っている人たちも結構いるようですが、彼らを観ると、うっかり『スタ誕』に合格してしまった時のキョンキョンや、90年代前半に異常な女性人気を博した元巨人の緒方耕一さんを思い出します。「そんなはずじゃなかったのに、どうしたものかこんな状況に戸惑ってます」風の「絶対的他薦感」が凄まじかった。自ら「俺、モテるんです」と宣言するより、「気付いたらモテてた」の方が断然アイドルです。しかしそんな人に限って「本当は分かっているけれど、敢えて分からない振り」をする策士であることが多いのも事実。「アイドル」という現象はこじらせてなんぼなのですから、そのくらい複雑な方が面白いと思う今日この頃です。
※週刊朝日 2020年3月20日号