「一刀石はしみた雨水が凍って膨張した結果ですが、いつごろ裂けたかは不明。普通は最初きれいに割れても雨や地震などで動いてずれてしまう。一刀石は巨大な岩に載っていて約30センチの隙間を保っている」
と三浦さんは説明するのだが、山あいで約7メートル四方の石が刀で切ったように真っ二つに裂けているさまは壮観だ。戦国時代、「新陰流」の開祖柳生宗厳(むねよし=石舟斎)が天狗を退治したときにできた、という伝承を信じたくなる。
宗厳の息子は徳川秀忠や家光の兵法指南役だった宗矩。その息子三厳は「十兵衛」として知られ、映画やテレビ時代劇などで人気を博し、千葉真一や松方弘樹らが演じた。「柳生一族の陰謀」などでは柳生家は悪役的にも描かれた。
「十兵衛は隻眼ですが刀を30センチの距離でかわす剣の達人とされる。片目なら距離感が鈍り、無理でしょう。『柳生武芸帳』で知られる五味康祐の発案らしい」と三浦さんは話す。
ともあれ、小説にドラマ、映画、SNS、コスプレ……形は違えど「剣豪ロマン」は時代を超える。(粟野仁雄)
※週刊朝日 2020年3月27日号