


日米安保条約が改定されて、60年が経過した。「安保ただ乗り」論をぶつトランプ大統領に2021年度以降、現在の4倍以上の「思いやり予算」の支払いを迫られ、超高額兵器の押し売りも続く。辺野古移設問題、横田ラプコンなど日米の問題を、山崎拓元自民党幹事長、ケビン・メア元米国外交官、一水会代表・木村三浩氏が徹底討論した。
【写真】イバンカ大統領補佐官を挟んで握手するトランプ大統領と安倍総理
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木村:今年、駐留米軍経費負担の交渉があります。トランプ大統領はかねて、日米安保条約は「不公平だ」と訴え、日本側の経費負担を現在の約4倍の約80億ドル(約8700億円)に増やすよう求めています。その「思いやり予算」は1978年度から2018年度までに累計で7兆2685億円に上る。基地従業員の給料や光熱費など本来、支払い義務のない負担です。
山崎:そのことに対する反発もあるのでしょう、国会議員の間で、しかも自民党の中から「安保条約見直し」という言葉が発せられるようになっています。91年に冷戦が終結し、現在は中国が経済的にも軍事的にも台頭しています。米中対立の時代とはいえ、かつての米ソ冷戦構造のような危機的状況にはない。その意味でも安保見直し論が出てくる余地はあると思います。
メア:日米安保体制は全く不公平とは思いません。日本には憲法9条があるため確かに非対称ですが、日米の役割と任務は第5条(米国の対日防衛義務)と第6条(米軍への基地提供義務)ではっきりしています。私はトランプ大統領の提案には同意しませんが、「思いやり予算」という言葉は不適切です。最初の特別協定を結んだ87年当時、私は駐日大使館の担当官でした。交渉では、米軍の駐留経費を日本がいくら払うという話はありませんでした。冷戦構造の中で日米がいかに責任分担できるかという概念で協議しました。まだ集団的自衛権が行使できない時でしたから、日本側はどういう貢献ができるかを考えて、駐留経費を背負うことになったのです。次回の駐留経費の交渉では、いきなりお金の話をするべきではない。集団的自衛権が行使できるようになるなど、日本の役割が向上していることを説明するべきです。