多くの女性にとって「クズ男」だとしても、けっして「ダメ役者」ではないのである。
一方、今回の騒動で引っかかったのは、杏をやたらと擁護する人たちの見方だ。それも「かわいそう」「気の毒」ならわかるが、彼女を公私ともに非の打ちどころのない存在として持ち上げ、東出のことを「格下」とか「分不相応」などとして貶める見方が目立つ。
しかし、そういう人たちは彼女の何を知っているのだろう。渡辺謙の娘というサラブレッド感や、その父に離婚というかたちで棄てられたうえ、夫にも浮気をされたという薄幸なイメージ、そういう先入観に引きずられすぎではないか。個人的には、杏の芝居こそ、ともすれば大げさで、深みがなく、色気にも乏しい。役者としてのふたりは、ほぼ同格という印象だ。また、その馴れ初めが、モデル同士だった時代、杏が東出に惚れたことだという話からしても、この夫婦に「格差」は感じない。
あと、東出について杏の七光りだと言う人もいるが、それなら杏だって、謙の七光りを無視できない。とにかく杏を過大評価する人は、もし彼女が謙の娘でなかったら自分はどんな評価をしていただろうかと、一度じっくり考えてほしいものだ。
と、杏上げ東出下げの声があまりにも目につくので、ちょっと反論してみた。どちらの才能も、不倫などという個人的かつプライベートな問題で枯れることのないよう願いたい。
■「ボクちゃん」は僕自身に結構似ている
その点、東出の「ケイジとケンジ」は残念だった。ダブル主演となった桐谷健太やヒロイン・比嘉愛未との息も合っていて、エリート検事ゆえのズレたにくめなさを好演したが、第2回の直前に不倫が発覚。アレルギー的に拒絶した視聴者がかなりいたようで、この枠としては3年ぶりの平均視聴率ひとケタを記録してしまった。
では、これから公開される「コンフィデンスマンJP」第2弾はどうだろう。こちらは一昨年の連ドラ、昨年の映画第1弾と、実績を積み重ねてきたシリーズだ。不倫アレルギーの影響は小さいのではないか。