2020年3月21日にすとぷりのYouTube公式チャンネル「すとぷりちゃんねる」で生配信されたすとぷり初の無観客ライブ【すとろべりーめもりー in すとぷりちゃんねる】のライブレポートが到着した。
ついに画面越しにライブの配信がはじまった。3月21日、YouTubeでの動画総再生数が14.5億回以上(※2020年3月現在、グループ・メンバーのアカウントでの合計再生数)を突破している動画配信エンタメユニット・すとぷりが、東京・Zepp Diver Cityで無観客生配信ライブを行った。
新型コロナウイルスの感染拡大による政府からの自粛要請を受け、相次いでライブの延期・中止が発表される中、すとぷりの行く手にも新型コロナの壁が立ちはだかり、3月21日に愛知・ナゴヤドームで行われる予定だったワンマンライブは延期。チケットは一般販売を待たずに完売していただけに、やるせない思いはそう簡単には拭えなかった。
昨年9月22日、23日に行われた埼玉・メットライフドームのすとぷり史上最大規模のワンマンライブ【すとろべりーめもりーvol.10】で残念ながら全ての席を埋めることができなかったすとぷり。愛知・ナゴヤドームでの公演は、そんな自分たちの大きな目標、そして挑戦を達成することができなかった悔しい気持ちを跳ね返すための新たな目標でもあった。延期という事実に頭も真っ白になり大きな試練に立たされ、考えに考え抜いて出した答えは、この日に代わるように用意された特別プログラムでの無観客生配信ライブだった。急きょ準備をして直前まで試行錯誤を繰り返し、伝えたかった想いが凝縮された2時間以上のライブは、ツイッター上の世界トレンドまでも賑わせる盛況ぶり。130万以上の投稿で日本のみならず世界のトレンド1位も獲得、反響の大きさにリスナー自身も喜んでいた。
フタを開けてみれば、同時視聴者数は24万人以上。YouTube Liveのコメント欄にも、一斉に投稿されるリスナーのコメントがあった。そこに湿っぽさは微塵も感じられない。画面に流れるコメントに、すとぷりのうつし鏡のようにこの日のライブを肯定することで生まれるきらきらしとした眩しさがにじむ。それは、すとぷりのかけがえのなさであり、初の試みとなる無観客ライブでも、きちんと“リスナーを幸せにしたい”という想いは伝わっているという実感を伝え得るものだった。
今後の活動に関する重大な発表があると事前に告知されていた同ライブでは、動画配信を軸に活動してきたすとぷりが、わずか3年9か月で東京ドームという大舞台でワンマンを行うという予想を遙かに超えた発表があった。動画配信をはじめた当初は、彼らだって想像していなかったに違いない。地上派での露出も今年になりやっと解禁されたばかり。先人の跡を辿るわけでもなく、ただただ普通の人間として、等身大のキモチを伝え続けたのがすとぷりだ。アニメの主人公でもゲームのキャラでもない。毎日の動画投稿、リレー生放送、そしてイベントを続け、何かに特化しているわけでもないけれど、そこにリスナーがいてくれる。そんなすとぷりが生配信というツールを使ってライブをするということに、ある種の必然性のようなものを感じた。そんなすとぷり史に残るライブのオフィシャルレポートをここにお届けしたい。
スクリーンいっぱいに「唐突だが 皆に問いたい」「王子とはどういうイメージだろうか」という文字が映ると、画面越しのコメントにも少しの間が生まれ緊張が走る。「少女漫画に出てくるようなイケメン?」「色んなイメージの王子があると思う」と次々に文字は入れかわり、「スマホに向かって言ってみて?」「てか聞こえないw」と、生配信ならではのジョークも交じる。その後、すとぷりが思い描く本物の王子は、“姫のために頑張り続ける者”と答えを示した。そして、それこそがすとぷりのあるべき姿だと伝え、赤色担当あざとさワンワン・莉犬、青色担当ハイテンションゲーム実況者・ころん、ピンク担当王道イケボ実況者・さとみ、オレンジ担当最強エンターテイナー・ジェル、黄色担当キューティーアーティスト・るぅと、紫担当最高のリーダー!!・ななもり。のメンバー6人を紹介する映像が流れる。コメントも一体となり、スクリーンに次に映し出された文字は「ひっくり返してやれお前たち!」「この暗い世界を!!」というものだった。
カウントダウンの数字が刻まれ、その数字がゼロになった瞬間、ゴリゴリなビートを効かせたイントロが加速していった。「Next Stage!!」だ。同曲は、ななもり。作詞によるメンバー紹介も盛り込まれた楽曲で、掛け合いも多い。「ウッキー」とお猿さんのポーズをメンバーがしてみせたり、「もっと」と歌えば「もっと」といったコメントで埋め尽くされる。今回のステージは、おおわれた紗幕にメンバーのシルエットが浮かび、バックの映像とは別にMVの映像も紗幕へ映し出される仕組み。ななもり。の巧みなラップから、核心的な<一緒に行こう 次のステージへ>という言葉がスクリーンに映ると、ステージとの距離は一気に縮まったようだった。続く「GO GO CRAZY」では、ステージにメンバーカラーの照明のラインが輝きアクセルをオーバーしたリスナーを興奮の渦に巻き込んだ。
「みなさーん、こんにちは! 無観客ライブ、スタートしました。すごいよ、コメント欄。ヤバくない? Zepp DiverCityを借りてやっているのですが、お客さんが目の前にいません。急きょ決定したライブなんですが、これ運命だったんじゃないかな。」(ななもり。)
「次の曲どんな曲?」とななもり。がメンバーにふると、莉犬が「ふーん、ふーん」と濁したり、るぅとが手で丸を作りその動きだけで曲を表現することにトライ。「お金?」と相変わらずのツッコミが入りながらも「Aqua Kiss」と息をあわせて曲紹介。紗幕に泡が落ちる演出に海の底に落ちたかのような夢のような空間に心奪われる。
初の実写MVで話題を呼んだ「僕らだけのシャングリラ」のイントロが流れると、なんと紗幕が振り落とされた! バックのMVと一緒にぴったり揃ったダンスを披露、時折、肩に手を置いたりMVとは違った動きも見せ、アダルトな新たな一面、その幅広さを目の当たりにし、序盤から息を呑んだ。
無声援のステージでも、ナゴヤドームの公演で使用する予定だった巨大なスクリーンに映し出されるコメント。それぞれが唯一無二の存在を持っていることが改めて思い知らされた中盤のステージを前に、いつもの動画投稿のようなやりとりの映像がスクリーンに流れ、安堵な雰囲気に包まれる。ジェルが「るぅとくんいつものあれやって」と述べ、「1回だけですよ?」と腹黒くもキュートな声で「コメントもツイートも、もっともっと見たいなあ……みんなのパワーはそんなものなんですか? 違いますよね?」とおねだり。そこからも軽快な6人のトークが続いた。そして「つづきまして、この2人」と、特別感溢れるステージに繋ぐ。
スクリーンにはすとぷりのイチゴのロゴが回転し、オレンジと紫色の2色のメンバーカラー、ななもり。×ジェルだ。顎クイなど女性を口説く手法を2人で試すなどスペシャルタイムな激しく甘いMCを挟み、2ndフル・アルバム『すとろべりーねくすとっ!』よりコラボ曲の「忍恋」で紫色とオレンジ色の大人組(※すとぷりではメンバーカラーで大人組と信号機組の2組にグループわけしている)らしい忍びの恋を表現、“ニンニン”と忍者のポーズからラストは背中合わせで桜の季節にぴったりの同曲でリスナーを沸かせ。さらに「非リアドリーム妄想中!」、ソリッドでクールな「存在SHOW明」でステージを熱く締めくくった。
続いて、さとみ×ころんのスペシャルタイムは彼女がいたらやってみたいことをテーマに、力強すぎるハグから耳元でささやくなどトークをヒートアップさせる。さとみの投げキッスの勢いが強すぎて舌打ちに聞こえ笑いを誘うシーンがありつつも、コラボ曲「遊獣浮男ボーイ」では、さとみがころんに顎クイ。頬を赤くするほどの演出に、ヒートアップしないわけがない。奇怪なイントロから「Code-暗号解読-」がスタートすると、フィールドを探索するようにさとみところんが別々にステージを歩き回り、やがて遭遇、暗号を解読し楽曲の世界観を魅せた。一転、「でこぼこげーむぱーてぃー」でゲームに負け続けるころんは、愉快に歌唱している姿が印象的であった。
最後のるぅとと莉犬のスペシャルタイムは、愛してるゲームで「愛してる」「好き」と互いに囁き合う。甘い時間は誰にも邪魔できない。あっという間に時間は過ぎ、るぅとが「あ、そろそろ学校の時間だよ?」と言うと、「行け! 僕らのスクールフロント!」と、サビで大きく0点のポーズをしてみせたり、莉犬をるぅとがおんぶして駆け回るなど、信号機組の2人らしい無邪気な姿を届けた。PS4/Switch用『妖怪ウォッチ4++』のテーマ曲「溶解ウォッチ」では、妖怪を感じさせるポーズにテンションが上がる。「すとろべりーごーらんどっ」で2人で追いかけっこ。存分に楽しんでる愉快な様子を見せた。
コラボ曲が披露された後、ななもり。がそれぞれのMCを振り返りイチャイチャしすぎて「ひやひやした」と本音をこぼし、本日のバンドメンバーを紹介。続いて「ストロベリー☆プラネット!」を届けた。<もっと好きでいいですか>という投げかけに「いいですよ」とのコメントが流れる。いつもとライブの環境は違えど、いつも通りのレスポンスに気持ちがグッと高まる。きっと、メンバーの動きにあわせて心の中でガッツポーズをしたり、抱き合ってくるくる回るメンバーに愛しさを感じたに違いない。「大好きになればいいんじゃない?」でも手を取り合いジャンプし上昇する気持ちが感じ取れた。<愛してる>と歌で伝えると、「愛してる」「大好き」と多幸感溢れるコメントのみが流れ、止まらない。この空間に流れる魔法の言葉は、いたってシンプルだが、理想の王子が目の前にいる。それだけで意味を持ち、爆発的に満たされるものがあるのだと、その余韻に浸いながら思った。
「今日のライブ楽しかったですか? 中止が決まったときは本当にやるせない気持ちで、俺たちもリハーサルとかナゴヤドームに向けて頑張ってたし、『すとろべりーねくすとっ!』のライブだったからアルバムの収録曲を全部持ってく勢いでフリとかもやってきたけれど出来なくなって、そんな状況の中、努力じゃどうしようもできないことが起こってしまって。本当にいろいろあったんだけど、こういうカタチでライブが出来て、普段は来れない子たちにも届けることができる……そういう、心に残った1日になりました。また絶対に、直接みんなの目を見てありがとうを伝える機会を作ります。画面の前のみんな、コメントをくれているみんなに出会えて幸せです」(さとみ)
「ころんです。きっと今日、初めてすとぷりをみましたという子もいると思うんです。今、こうしてすとぷりを見て、ころんを見て楽しかったって思ってくれたら僕はその時点で友達だなって思ってて。配信ってめちゃめちゃいいところがあって、みんなのコメントもアクティブに見れるし、そうやってどんどん好きになってすとぷりの良さを広めてくれたら僕はめちゃめちゃ嬉しいなって思ってるんです。これを機に好きになってくれた画面の向こうの君たち、本当にありがとう。すとぷりはとても良いグループです。これからもがむしゃらに頑張るので、応援よろしくお願いします。今日来てくれた人たち、本当にありがとうございました!」(ころん)
「本当だったらナゴヤドームっていうおっきい会場でお客さんがいるライブをしていたはずでした。今この時間ぐらいにやってたんじゃ無いかな? ライブをしてしまうと、応援してくれてるみんなを危険に晒してしまったり、悲しませたり心配かけてしまう。迷いながらも数ヶ月間いろんな選択をしてきました。みんなのこと喜ばせたいなって思っていたのに、延期になることで結果的に悲しませちゃって、自分たちも本当にやるせない気持ちだった……。でも、無観客ライブをやろうって決めてから、悲しい気持ちを塗り替えられるくらい『楽しい!!』、『うれしい!!』っていう気持ちを届けられるように頑張ってきました。今日、楽しんでくれて本当にうれしい。これからの活動を楽しみって言ってくれるのがすごく支えになりました。みんなが喜んでくれることを一番に考えて全力で頑張っていくので、これからもそばに居てくれると嬉しいです」(るぅと)
「すごいいろんな気持ちがあって、1番は……やっぱ会いたかったなって。コメントと向き合えるのも楽しいけど、みんなが喜んでる顔を直で見たかったなって気持ちがすごくあって。すとぷりは無観客ライブはじめての試みなんだけど、結成してからここまで、まだはじめてのことってたくさんあるんだなって思って、まだまだ挑戦できるんだなって思ったライブでした。俺たちは特別な人間じゃなくて、何かに特化してるとかすごいことができる人間じゃなくて。みんなと変わらない、ホント、いち人間で……こうしてライブができてるのは、間違えなく応援してくれるリスナーさんたちのお陰です。特別じゃない俺たちに特別なステージをくれて本当にありがとう。これからも色んな挑戦をして、配信や動画を見てくれるみんなが、ちょっと頑張ってみようかな……って思える一歩になれたらいいなと思っています。今日という日を一緒に作ってくれて本当にありがとう。また、いつかのライブでは、顔を見てありがとうと言わせて下さい」(莉犬)
「いろんな準備してきたよね? 俺たち。だからこそ延期はすごい悔しかったけど、延期になることで不安にさせてしまったリスナーさんたちのために、みんなで『無観客ライブをやろう』って決断した時、本当にすごいグループだなって思って。自分の夢とすとぷりの夢が一緒だなって思って。『100ある辛い苦しみを俺たちの活動で99、98にでも良いから減らしたい』、『俺たちがいることで生きがいになりたい』。脇役でいいやって思ってた俺が、主役になって頑張ろうって思わせてくれたグループだから、本当にすとぷりは最高だなって今回のライブで改めて思いました。そして、何より嬉しかったのはみんなが俺たちの想いを受け取ってくれたこと。最高のリスナーさんと最高のすとぷりでお互い気持ちを与え合ったら、どこまでもイケると思う。俺たちはどんな時もみんなを思っての決断をします」(ジェル)
「みんなの声、聞こえるよ。本当にありがとう。ネットで活動している俺たちが、お父さんお母さんや友達や恋人に『すとぷりのこと好きなんだ』って言えるようなグループになること。これが俺たちの目標で、新しい俺たちを見せていくために挑戦していく……それが俺たちにとって必要なことだよねって6人で話して挑戦したのが【すとろべりーめもりー vol.10】西武ドームのライブでした。動画を見てくれた子は知ってると思うけど、俺たちは自分たちで掲げた目標を達成できませんでした。でも、目の前には応援してくれる子がいて、挑戦したことに悔いは無いけど、もっともっと頑張れたんじゃ無いかなって思いました。 そしてナゴヤドーム。チケット、実は完売していたんです。俺たちにとっても、あの時見てくれたリスナーさんたちにとっても本当に特別で大切なライブ。本当に嬉しくて全力で頑張ろうって。でも、1月の終わり頃からライブの中止を考えなければいけない状況になって……。気持ちとは関係ないところで、目標を達成できなくなる。他のどこかに所属せず、自分たちで活動をしているから、中止になったらライブどころか明日からの配信や動画も続けることができなくなるんじゃないか。どうしたら活動を続けていけるのか、挑戦していけるのか……そんなことを考えながら、胃がキリキリする1、2か月でした。でも、俺たちの気持ちを受け取って、頑張ってくれたスタッフさんのおかけで、(ナゴヤドームは)中止ではなく、延期することができて、今回の生配信ライブができました。ライブハウスに電話をかけて、6人で1からライブをやっていた俺たちが、今こうやって何十万人という人に見ていただけて、何百人というスタッフさんにお手伝いただけて、こんなに幸せなことはありません。どんな困難があっても、俺達は努力し続けられる自身があります。応援して、支えてくれるみんながいてくれるから」(ななもり。)
ラストのMCでは、ひとり一人が真っすぐな想いを伝え、さらに東京ドームでのワンマンライブを開催することも発表された。詳細は後日改めて発表とのことだが、2020年6月でユニット結成4周年を迎えるすとぷりの歴史的な場面を生配信で共有するという、すとぷりらしい場での発表の仕方を選んだことは、偶然であっても、“まだすとぷりのライブに来たこと無い子にもお知らせしたい”と悩み抜いて出した答えであった。
「続いての曲は、せーの!」ではじまった「おかえりらぶっ!」は6人の肩を寄せ合うシルエットからはじまり、銀テープが無声援のステージに舞う。けれど、そこには「ただいま」の声援がいつも以上に届いていた。さらに、メットライフドームのラストでも披露された「すとろべりーぷりんすふぉーえばー」で締めくくると、すとぷりの恐ろしいまでのパワーを肌で感じた。これからに対する期待と共に、“一緒に歩んでいこう”というすとぷりの優しさを全面で受け止め、ライブが終了した後も、その魔法は解けることない力強さを持っていた。すとぷり旋風は、まだまだこれからだ。
Text by 後藤千尋
Photos by 林 晋介、東 美樹