普段は大型観光バスが並ぶ河口湖畔の遊覧船乗り場駐車場=3月5日/(c)朝日新聞社
普段は大型観光バスが並ぶ河口湖畔の遊覧船乗り場駐車場=3月5日/(c)朝日新聞社
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「すでに関西では20社ほどが運行停止状態です。給料が払えないのでドライバーは解雇。『退職金はなし。当面、失業保険で食ってくれ』と開き直っている社長もいるそうです」

 こう話すのは大阪府内に本社がある、貸し切り専業バス会社のドライバー兼整備管理責任者の“ももさん”。

 外国人観光客は激減し、観光地を闊歩(かっぽ)していた中国人は、見る影もない。日本政府観光局によると、2019年に訪れた訪日外国人は3188万人で、そのうち中国人は約3割を占める。それが、ほぼゼロになったのだから、中国人ツアーを主要顧客にしていたバス会社にとって死活問題だ。

 関西エリアの貸し切りバス会社に追い打ちをかけたのは、国内の日本人の初の二次感染が、大阪のバス会社に勤務する奈良県在住のドライバーだったこと。風評もあり、軒並み窮地に陥った。

 バス業界に詳しい高速バスマーケティング研究所の成定竜一代表はこう話す。

「大手バス会社と違い、中国人相手の貸し切りバス会社はサービスの質より激安がウリ。収益性は低く内部留保も少ない。経営体質は脆弱(ぜいじゃく)なんです」

 ももさんもそれを裏付ける。

「中国人ツアーの貸し切り料金は、関西空港から成田空港までの4泊5日なら高速道路料金別で相場は8万~9万円前後。なかには6万円前後の薄利多売で自転車操業していた会社もありました」

 それだけではない。中国系旅行会社の未払い問題もあるという。

「ウチでも複数の会社の未払い運賃が数百万円あり、いつ解決するかわかりません。他社も大なり小なり、未払い案件を抱えているんじゃないでしょうか?」(ももさん)

 一方、ドライバーの給与は歩合率が高いという。ももさんの会社では基本給が20万円。昨年12月までは、それに運行、走行距離、車両管理といった諸手当がついて額面40万円前後、手取りは30万円ほど。ボーナスはないが、

「1日当たり3千~4千円のチップをもらえるので、家族持ちでもやりくりできました」(同)

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