新型コロナウイルスによる肺炎で志村けんさんが29日夜に旅立った。
【写真】志村さんも治療に使っていたという人工肺「ECMO」がこちら
数々のキャラクター、そして人気フレーズを生み出してきた志村さんだが、代表的なギャグの一つ“だっふんだ”が生まれた背景を取材すると、笑いの職人としての真摯な姿勢が表れていた。
“だっふんだ”のルーツは落語にある。上方落語の伝説的な噺家・故桂枝雀さん(1999年逝去)が得意ネタとした噺「ちしゃ医者」に出てくるフレーズに、志村さんが着目したのがきっかけだった。
枝雀さんの弟子・桂南光から話を聞いた。
「“だっふんだ”は『ちしゃ医者』の中に出てくる医者が見せる大げさな咳払いの音として師匠がやっていたもので、それを見た志村さんが『これは面白い!』と思ってギャグにされたんです。志村さんもハッキリと『枝雀さんのを使わせてもらっています』とおっしゃってました。師匠と志村さんが飲みに行くとかそういうことはありませんでしたけど、桂枝雀独演会には何回もお客さんとして来られてました」
噺の中で“だっふんだ”というフレーズが殊更クローズアップされる作りにはなっていないが、敏感に語感の面白みをキャッチし、ギャグへと昇華させる。そして、それを枝雀さんにも伝え、認めさせる誠実さも、このギャグが生まれるために必要不可欠な要素だった。
「だいじょうぶだぁ」は福島県の親戚が発した言葉を、「カラスの勝手でしょ」は近所の子どもが遊んでいた時の言葉から生まれたと言われているが、常にアンテナを高く張り「何かしら笑いのタネはないか」と探し続ける。その姿勢が志村けんという存在を形づくっていた。
こういった笑いの求道者としての姿勢も敬意を持たれてきた所以だが、もう一つ、志村さんが愛された大きな理由が人間性だ。
■“偽ドリフ”のヒゲダンスに志村さんは…
1979年頃からTBS「8時だョ!全員集合」で大人気になった志村さんと加藤茶のヒゲダンス。これはガダルカナル・タカから聞いた話だが、タカとつまみ枝豆のコンビ「カージナルス」が当時の所属事務所から言われるがままにヒゲダンスを完全コピーし、台湾各地をまわって“偽ドリフ”として公演を打っていくという、リアル闇営業というか、荒唐無稽な裏営業的なものがあった。