秋冬コレクションは、新型コロナウイルスの感染拡大に追いかけられるかのように世界4都市を移動した。根底に流れるのは「サステナブル」と「原点回帰」だ。低迷するファッション界の希望となるか。AERA2020年4月6日号では、世界的ブランドのトレンド発信を取材した。
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2020/21年秋冬コレクションは、新型コロナウイルスに追いかけられながらの開催となった。コレクションサーキットは2月7日にニューヨークでスタートし、ロンドン、ミラノ、パリと世界4都市を移動した。
ニューヨークとロンドンでは、平常と変わらぬ進行であったが、ミラノコレクションの実質的な最終日である2月23日に異変が起きた。早朝にこの日の夕方から開催予定のジョルジオ・アルマーニのショーの招待キャンセルの知らせが飛び込んできたのだ。
この頃、イタリアでは「ダイヤモンド・プリンセス号」のニュースがトップで報じられ、「ヨコハマ」が連呼されていた。イタリア国内の感染者も急増し、この日ミラノの近郊では3人目の犠牲者が出ていた。アルマーニの広報は、「混雑した会場に案内することによるリスクを考慮した」として、無観客での開催を決断。ショーの模様は公式サイトなどで中継された。
その翌日、パリコレクションが始まった。中国ブランドが参加を見送ったほか、アジア圏からの来場者は激減、幾つかの展示会とショーの中止はあったものの、コレクションはスケジュール通りに進行、今のところコレクションによる「クラスター」の発生は報告されていない。
パリは世界的な人気ブランドが集まり、ショーへの投下資本も他の都市とは桁違いに大きい。パリコレクションのみに来場するバイヤー、ジャーナリストも多く、ショーがキャンセルになった際の影響も大きい。ブランド側が会場づくりなどを工夫したこともあり、ショーは平静に粛々と進行した。来場者は減少したものの、その分真剣勝負のような雰囲気が覆っていた。