WWEは「WWEネットワーク」という動画配信と各国への番組販売で180カ国以上、28の言語で放送されているグローバルなブランド。それを反映した選手層の多様化も日本のレスラーには追い風だ。現在、WWEには約30カ国から選手が集まっているという。前出の高崎さんはこう言う。

「いまのWWEは世界中のプロレスを細かく見ています。メキシコやヨーロッパからいい選手をとってきていて、その一環に日本も入っています」

 もともと日本でプロレスが盛んなことはアメリカでも知られており、間違いのない市場として認識されている。

「アメリカのプロレスというと大男がぶつかりあう大味なイメージでしたが、いまは世界中から選手を集めているので、本当にバラエティーに富んでいます」(高崎さん)

 メキシコからはマスクマンが空中殺法を繰り出すルチャ・リブレが、イギリスからは関節技なども駆使するヨーロッパスタイルのレスラーが、東欧からは怪力男系のレスラーが、WWEに来る。最近は中国、インドのレスラーも進出しているという。そんな中、日本のレスラーも各々の個性を発揮している。

 アスカ(38)は15年10月のデビュー以来、約2年半で267連勝や、NXT女子王者として王座在位523日などの記録を樹立し、18年12月にはスマックダウン女子王者となった。 

「アスカはキックや関節技を駆使した格闘技的な試合運びでWWEを席巻しました。日本でも独特の存在感はありましたが、アメリカに行く時点でここまでの活躍は予想できませんでした。アメリカであっても関西弁でアピールしています」(高崎さん)

 カイリ・セインや紫雷イオは日本の女子プロレス団体「スターダム」のエースだったが、身体能力の高さがずば抜けている。

「『日本の女子プロレスはこんなことやっているのか』とみんな驚きます」(同)

 そんなWWEの年間を通じての最大のイベント「レッスルマニア36」が史上初、日本時間4月5日と6日の2日間にわたる開催となった。今年は、コロナウイルスの感染拡大の影響で無観客で実施、WWEネットワークでの配信のみとなった。

 観客とのコールアンドレスポンスがあってのプロレス。無観客試合はどうなるのか──。

「無観客だから迫力に欠けたとかいまいちだったねというのが、WWEとして一番避けたいこと。すごい演出やサプライズ的なしかけをするのではないか。WWEとしての意地が出るんじゃないかと思います」(同)

(朝日新聞出版・小柳暁子)

AERA 2020年4月13日号