日常生活に大きな支障はないものの、耳の聞こえが悪くなるなど、体の不具合を常に感じずにはいられない慢性中耳炎。治療の選択肢は広がったが、病態に合った処置を受けないと、再発したり治療が長引いたりする場合もある。他施設で受けた治療の再手術も多く手がける、聖隷横浜病院副院長・耳センター長・耳鼻咽喉科部長の松井和夫医師に治療法や施設選びについて聞いた。

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 鼓膜に孔が開いたままの穿孔性中耳炎の場合、一般的には鼓膜形成術という手術が行われます。現在、鼓膜形成術は、鼓膜の内側から筋膜など鼓膜の材料を接着剤でつける接着法(アンダーレイ法)と、鼓膜の層の間に材料をはさみこむインレイ法の2種がおもに実施されています。

 耳の病気に限らず、患者さんは「できれば入院せずに治したい」「早く治療を終えたい」と希望します。そのため鼓膜形成術でも、治療成績はいいけれど8~10日の入院が必要なインレイ法よりも、日帰りや1泊の入院でできる接着法での治療が人気を集めています。

 鼓膜再生療法は接着法以上の手軽さで現時点では治療成績もよく、治療の選択肢の一つとして有望です。

 こうした新しい治療法を受ける場合は、たとえ直後の状態が良好であっても、その後の経過まできちんとフォローする施設を選ぶことが大事です。

※週刊朝日 2012年6月1日号