国内で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。医療資源や人員の不足にあえぐ医療現場からは悲痛な声があがっている。AERA 2020年4月20日号から。
【写真】マスクブローカーが暴露「世界的争奪戦に敗れる日本政府」の実情
* * *
東京など大都市を中心に新型コロナウイルスが感染拡大するなか、医療供給体制を不安視するのは、日本国民だけではない。
「今後感染が急速に拡大すれば、日本の医療保健システムがどのように機能するのか、予測するのは難しい」
4月3日、在日米国大使館はウェブサイトに掲載した注意情報でこう指摘し、一時的に訪日している米国民に対して、ただちに帰国するよう促した。そして、感染の有無を調べるPCR検査について、「日本政府が検査を広範には実施しないと決めたことで、罹患(りかん)した人の割合を正確に把握するのが困難になっている」との認識を示した。
日本国内で公表されている感染者数は、中国や欧米に比べて少ない。だが、検査数が限定されているため、新型コロナ感染拡大の実態がわからないことへの不安は根強い。
安倍晋三首相が緊急事態宣言を7都府県に出す前日の4月6日。都内で開かれた東京都医師会の記者会見で、尾崎治夫会長は「医療面から」と強調したうえで、「医療的緊急事態宣言」を出した。感染拡大の防止を狙うとともに、東京の医療体制への不安もあったようだ。
会見で尾崎会長は「この1週間くらいで状況が変わってきた」との認識を示した。都内の複数の「名のある病院」からも、「かなり厳しい。医師も看護師も疲れている。若い先生方もメンタルに負担がきている」といった声が聞こえるようになったのだという。
医療スタッフの確保は大丈夫か。ベッドはあるのか。必要な医療機器は足りているのか。アエラの取材に応じた同医師会の猪口正孝副会長はこう話した。
「ベッドの数は計算上は成り立つが、急激な需要の増加に対応するのは厳しい。人工呼吸器は足りると考えていますが、ECMO(エクモ、人工肺)は限りがある。隣接する県と融通し合うとか適応を考えるなどの対応が必要と考えています」