稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
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アフロに合うマスクとオーダーしたらこんなヒップなやつ来ました! 会う人全てに褒められる(写真:本人提供)
アフロに合うマスクとオーダーしたらこんなヒップなやつ来ました! 会う人全てに褒められる(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんがオーダーしたアフロに合うマスク

*  *  *

 最近、にわかにマスク長者となりつつある。

 我が周囲の手芸野郎どもが布マスク製作に目覚め始めたのだ。FBでは「つくりました」情報があふれ、思わず欲しいとコメントするとすぐ送られてくる。近所のおばあちゃんも「マスク作ったの。いる?」。いるいると答えたら翌日、幅広の医療用包帯で自作したアイデアマスクが。なるほどフィット感抜群。近くの障がい者施設が製作した星柄のワンポイント入り300円も買う。さらに友人のコーヒー屋さんがコーヒーフィルターで作るマスク(コーヒー粉末入り)を紹介していたので思わず欲しいと……いやいやここは我慢だ。なにしろ服は10着しか持たぬ身分。ふと気づけばマスクの着替えっぷりだけが激しすぎる。

 こうなってくると人様のマスクも気になる。我が近所でも若者から年寄りまで個性的な布マスク姿を目撃するようになった。花柄動物柄チェック柄、手ぬぐい柄にパッチワーク、果てはニットまで。並んで買った悲壮感がないのがいい。絶望的状況を逆手に取ったトボケた感じもいい。ささやかだけどやられっぱなしじゃない感じ。服の大流行がなくなって久しいが、これは世代も性別も超えた奇跡のファッションアイテムになり得るんじゃと妄想して心を慰める。

 ちなみに我らが首相が世帯2枚の配布を表明した時は「効果なし」とバカにされた布マスクだが、布マスクに罪はないんだと言いたい。確かに感染を防ぐには竹槍。だが人に感染させない効果は侮れぬ。咳エチケット効果は高く、会話しても飛沫を飛ばさずに済む。無症状感染に注意しなきゃいけない昨今、十分強力アイテムと言っていいと思う。

 ということで、私はもうマスクを十分に持っているし、これからも無限に手に入りそうなので、お国の配布を辞退したいのである。困窮している人がこれほど多い中で、無駄になるお金は1円でも少ない方が良い。っていうか少なくなければならない。

 と官邸にメールを送ったんだが誰か読んだかな。

AERA 2020年4月27日号