田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
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イラスト/ウノ・カマキリ
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 ジャーナリストの田原総一朗氏はこの時期のメディアの「安倍首相叩き」に疑問を感じるという。

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 4月10日に安倍首相に会い、緊急事態宣言が遅れた点について問うた、と先週書いた。実はもう一つ、重要なことを聞きただしていた。

 安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、接触機会を8割減らすように要請しているが、多くのマスメディアはとても実現は難しいと報じている。どのメディアもはっきりとは言わないが、その理由は、緊急事態宣言の内容が欧州各国、米国、そして韓国とも異なっているからだ。他国はいずれも、緊急事態下での違法行為、つまり不要不急の外出や、休業に応じないなどした場合は、罰則規定があって罰金を取られたり、逮捕されたりする。ところが日本の場合は、あくまで要請であって、それに応じなくても罰則はない。つまり、強制力がないわけだ。だから緊急事態宣言を出しても、悪く言えば生ぬるくて、安倍首相は指導力がないということになりかねない。

 そこで安倍首相に、なぜ日本は罰則規定を設けないのか、と問うた。

 すると、安倍首相は困ったような表情で、「罰則規定を設けるべきだという意見が、自民党議員の中にもあるのだが、戦後、日本は戦前の軍部による度の過ぎた強制力への反省から、人権の尊重が最重要でしてね。罰則規定を設けるのは難しい……。田原さんはどう思いますか」と逆に問われた。

 私はしばらくちゅうちょしたが、戦争を知っている世代として政府が強制力を持つのは危険だと捉えているので、罰則規定には反対だと答えた。そのかわり、休業要請、あるいは外出を慎むことで客が来なくなって、経営が悪化する飲食店などへの補償をきちんとやるべきだと強く主張した。安倍首相は、そのことは十分考えたい、と答えた。

 ところで、ここへきて、新聞や雑誌などには安倍首相叩きが氾濫している。それもすさまじい叩き方だ。

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