SLEに伴う腎障害であるループス腎炎に対しては、免疫抑制薬である「ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)」が、2016年5月から保険で使えるようになった。

「欧米でも日本でも、ループス腎炎に対するガイドラインでは、ステロイドに加える免疫抑制薬としてミコフェノール酸モフェチルとシクロフォスファミドが第一選択となっています。これらの薬剤に加えて、基礎的治療としてヒドロキシクロロキンの使用が考慮されます」

 ただしこれらの薬は妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与できない。

「また、ループス腎炎については、腎臓を助ける治療も重要です。血圧をコントロールしたり、LDLコレステロールを下げたり、抗血小板薬で心血管疾患の予防したり、いわゆる動脈硬化症の治療をおこないます」

 べリムマブという生物学的製剤(抗体医薬品)は、SLEの患者の血液中に過剰に存在し、自分の体を攻撃するB細胞を助けるB細胞活性化因子というたんぱく質を使って抑えることができる。関節炎、たんぱく尿などを改善する。SLEの再燃率を低下させ、ステロイドの量を減らすこともできるというメリットもある。ただし、ウイルス感染症に対する抵抗力を抑制するため、帯状疱疹をはじめウイルス感染症に対する注意が必要だ。

「今後期待される新薬には、抗インターフェロンα抗体のアニフロルマブがあります。活動性SLE患者に対して、プラセボ(偽薬)との比較試験で有意に疾患活動性を抑制したという結果が出ました。ステロイドを目標投与量の以下まで減量し、再燃の頻度を比べたところ、プラセボよりも再燃する患者の割合を低く抑えました。帯状疱疹には注意が必要です。期待される新薬ですが、日本で使えるようになるにはまだ1年以上先になると思います」

 このように、新しい薬の出現により、治療の選択肢が広がり、病態によっては、QOL(生活の質)を保ちながら病気をコントロールできるようになっている。10年生存率も90%以上だ。

「ただし、SLEは繰り返し再燃することもあり、長く付き合っていかなければならない病気であることも確かです。この病気を熟知している医師と十分に話し合いながら、適切な対応をしてもらい、ご自身らしい生活を送っていただきたいと思います」

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