だがその広場には、新型コロナウイルスの影響で今、人影はほとんどない。

「これだけ社会が混乱して、外出もままならない。独身だから、家に帰っても一人なんだ。ここにきて、人とのつながりの大切さを感じるね。今は寂しい気持ち。子どもをつくらなかったことを後悔している」

 そして、「言いたいことを言ってきてうるさいくらいだよ(笑)」と話す姪は今、同じくコロナ禍に覆われるギリシャで暮らしている。

「記者さんも、コロナにならないように気を付けてね」

 そう言って、男性は大通りの方に歩いて行った。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出自粛が求められている。政府は6日までとしていた緊急事態宣言をさらに1カ月程度延長する見通しだ。引き続き人との接触が制限される。男性のように、ふと立ち寄った場所で、遠く離れた人に思いをはせる人も少なくないだろう。(AERA dot.編集部/井上啓太)