漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「M 愛すべき人がいて」(テレビ朝日系 土曜23:15~)をウォッチした。
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浜崎あゆみと現エイベックスCEO・松浦勝人の出会いと別れ、あゆのデビュー秘話をつづった同名本のドラマ化。これが期待通りのボンクラドラマで最高だ。なんせ展開が全てお馬鹿。
まず松浦を思わせるマックス・マサ役が、本人とかけ離れたイケメン・三浦翔平ってだけでもう爆笑。アユ役の安斉かれんは、夜店で売ってるバッタモン・あゆみたいなルックスがちょうど良いあんばいだ。
マサの秘書・姫野役は、最近エロ悪女といえばこの人・田中みな実。なぜかみかんの皮みたいな眼帯して、ぶどうの実を取り出し、「私の目玉食え~」とばかりにマサの口にねじ込む。と見せかけ自分で食っちゃう。なんなんだよ。
TKこと小室哲哉らしい輝楽天明(新納慎也)。濃い紫の口紅&ド派手ファッションはTKというより志茂田景樹? マサが三浦翔平なのに、TKが志茂田ってところに深い闇を感じる。
頭にでっかい羽根飾りつけたボイストレーナーの天馬先生は、イカレキャラやらせりゃ間違いなしの水野美紀だ。キレると突然ドラムをドカスカたたいて、「今度『え?』って言ったら燃やすよ!」バシーン(シンバルの音)。出てくるキャラ全員、R‐1ぐらんぷりのピン芸人みたいだから。
めくるめくコントで振り返る浜崎あゆみ・愛と涙の半生。これでいいのか、あゆ。太っ腹だな、あゆ。今までこんな半笑い尽くしの実録ドラマってあった?
巨大ディスコで出会ったアユとマサ。彼女の中に輝きを見いだしたマサは言う。「自分はダイヤの原石だと思うんだ!」。するとアユもすかさずつぶやく。
「アユハダイヤ……アユハダイヤニナル……」。もうね、びっくりするくらい棒読みなんだ。宇宙人かと思うくらい棒読みよ。「アユ、ヤリマス。アユ、ハシリマス」
天馬先生に「ロウソクの火を揺らさずに歌え」と、民謡歌手の金沢明子がやってたみたいな特訓を命じられるアユ。ロウソクに向かって歌い出す。
「オ~アイラ~ビュ~♪」
歌にも棒読みってあるんですね。でも、それでいい。周りが濃いキャラばかりで胸やけ起こし始めた頃に、その棒読みちょうどいい。大根ならぬ大根おろしで、ホッと一息つきたい。
ただ今後、リアルあゆの歌を聴くたびにきっと思い出しちゃうだろう。「オ~アイラ~ビュ~(棒)」を。
※週刊朝日 2020年5月22日号