検察庁法改正案への反対世論が盛り上がっている。
この改正について問題点を挙げればきりがないが、今回はそれとは離れ、検察庁法改正案と一体で提出された「国家公務員法改正案」の問題について指摘したい。
現在、国家公務員法で一般公務員の定年は60歳とされ、その後、年金支給開始年齢の65歳まで再任用という形式で雇用延長の道がある。
今回の改正案では、再任用ではなく、定年そのものを65歳まで延長する。それだけ聞くと、人生100年時代だし、年金支給開始が原則65歳だから、「まあいいんじゃないか」と思うだろう。政府が「長年培った職員の知識と経験を生かすべきだ」というのもわかる気がする。
しかし、その中身を詳しく知ると、きっと驚くはずだ。というのは民間の感覚ではとても考えられないような好待遇だからだ。
民間では、正社員になれない人も多い。仮に正社員になれたとしても、誰でも昇進・昇給が保証されているわけではない。なかなか昇進できなかったり、時には降格されることもある。だいたい50歳代のどこかで役職定年があり、役職を離れれば給料が下がる。多くの企業は60歳定年だが、その後の再雇用では、さらに給料が半分以下になり、最高給与に比べ3割4割というのもざらだ。運が悪ければ失業もある。
それに比べて、公務員は、重大な犯罪行為でもない限りクビにならない。降格もなく、役職定年もなしで毎年60歳まで給料が上がり昇進も続く。今回の改正案で定年を65歳まで延ばすのだが、その先がスゴイ。
毎年上がり続ける給料は、キャリア官僚なら60歳で安くて年収1500万円程度、ノンキャリアでも1千万円超はざらだ。今回60歳役職定年が導入されるが、65歳までは、60歳の最後の給料の7割が「法律」で保障される。たいした仕事もせずに1千万円の高給をもらう役人が続出する。個々人の能力や意欲とは無関係と聞けばさらに驚く。
これにより人件費が増加し、その分、より多くの若い職員を減らすから、役所の効率は下がる。
こんな内容になるのは、安倍政権が官僚たちのご機嫌を取りたいからだ。政権忖度で、国会での虚偽答弁、文書隠蔽・改ざん・捏造などの違法行為までしてくれる官僚たちに厚く報いることで、彼らの忠誠心を維持して政権基盤を安定させなければならない。
一方、こんなひどい内容なのに、立憲民主党などの野党が反対しないのは何故か。本改正案は、公務員全体にとって20年来の悲願。そこで、公務員の労働組合を支持母体とする野党は、この法案だけは通さなければならない立場に置かれる。