自民党幹部によると、検察庁法改正案の断念は当初、安倍官邸の頭にはなかったという。しかし、ツイッターの「#検察庁法改正案に抗議します」などで批判が高まるにつれて危機感を覚えたのが、公明党だった。

「検察庁法改正案について連日、支援者から電話やメールが届きました。『まさか検察庁法改正案に賛成したりしないでしょうね』『ツイッター見ていますか。検察庁法改正案を通したりしたら、次の選挙は応援しない』などの電話もあった。うちの幹部も『この法案を自民党の言う通り、賛成するととんでもないことになる』と焦っていた」(公明党の国会議員)

 そこで、安倍官邸に方針を変えさせようと公明党がすがったのが、二階俊博幹事長だったという。公明党とのパイプが太い二階幹事長が、山口那津男代表と安倍首相の会談をお膳立てし、コロナ対策で国民への給付金を条件付きで30万円から一律10万円に変更させたのは、記憶に新しい。

「安倍官邸は検察庁法改正でも当初、強気で強行採決も辞さない構えだった。だが、二階さんが公明党と先送りの方向で話をつけ、それを官邸の菅さんに真っ先に伝えた。菅さんはコロナ対策で干されるなど、安倍首相や側近の今井尚哉首相補佐官らと最近は関係が悪い。検察庁法改正でも興味を失っていた。二階さんに外堀を埋められ、安倍首相はこれ以上、無理はできないとあきらめたようだ」(前出の自民党幹部)

 自民党ベテラン議員によると、後援会で「検察庁法改正に賛成したら次の選挙で自民党に入れません」と訴える支援者が何人もいたという。

「党内でも検察庁法改正に賛成できないと訴える議員は結構、いました。安倍首相の求心力が落ちている背景には、自民党総裁の任期が来年秋に迫っていることもある。今国会の検察庁法改正案の成立断念で、安倍首相と二階さん、菅さんとの亀裂はより深まったことが露呈した。干されている菅さんは二階さんの後押しで巻き返しを狙っているようだ」

 検察庁改正法案は新たな政局の火種を残したようだ。(本誌取材班)
※週刊朝日オンライン限定記事

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